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金曜日, 2025-09-12
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「豊収」黄桃缶詰、40年以上の輸出実績を経て中国市場に戦略的回帰へ

1970年代に日本への輸出を始めて以来、海外で確固たる地位を築いてきた中国の老舗ブランド「豊収(ほうしゅう)」が、今、中国国内市場への本格的な回帰を果たしています。長年培ってきた高い製品品質とブランドの歴史を強みに、「豊収」は“伝統ブランドの再興”という潮流の中で、新たな活力を示しています。

確かな品質と実績を強みに

北京豊収国際貿易有限公司は、かつての北京市糧油食品輸出入公司を前身とし、30年以上にわたり果物缶詰の輸出に携わり、特に中高級市場で高い評価と信頼を築いてきました。1968年に商標登録された「豊収」は、北京ではよく知られた老舗ブランドです。

同社の代表である李楽瀟(り・らくしょう)氏は次のように語ります。

「『豊収』の黄桃缶詰は1970年代に日本市場に進出し、現在では日本の缶詰輸入市場で約7%のシェアを占める安定供給メーカーの一つです。このように長期にわたり安定して輸出できているのは、国有企業としての信頼性はもちろん、何よりも品質に自信があるからです。」

輸出基準を保ち、国内消費者のニーズに応える

中国国内での健康志向の高まりに対応するため、「豊収」は「輸出から国内販売へ」という戦略を展開しています。輸出用と同等の高い品質基準を維持したまま、中国市場向け製品を開発しています。

原材料には、輸出等級の黄桃を厳選。果肉は厚く、色が鮮やかです。製造工程では、手作業での種抜きや選別を徹底し、異物混入を防いでいます。また、添加物を抑えたシンプルな配合で自然な甘さを実現しており、高齢者や子どもも安心して食べられる製品です。

李氏はさらに強調します。「当社の缶詰は、アメリカ食品医薬品局(FDA)の認証を取得しています。これは輸出品質の証明であると同時に、中国市場における信頼性の裏付けにもなります。」

国内向けにはパッケージデザインも刷新。桃のイラストと縁起の良い「豊収開好事(豊作が良いことを招く)」というメッセージを添えた、赤を基調としたデザインは、贈答用としても家庭用としても人気を集めています。

贈り物文化の変化と「缶詰+ノスタルジー」

近年、中国では消費者の価値観が「見栄え」や「高級感」から、安全性、品質、実用性を重視する「品質ギフト」へとシフトしています。保存性や利便性、栄養価の安定性といった特長から、缶詰が再び注目され、特に年末年始や帰省時の贈答品として人気が高まっています。

SNS上では「子どもの頃、黄桃の缶詰はお祝い事や病気の時にだけ食べられる特別な存在だった。『豊収』を見ると、あの頃の記憶が蘇る」といった投稿が見られます。若年層の間でも、**「缶詰+ノスタルジー」というコンセプトが共感を呼び、TikTok(抖音)やRED(小紅書)といったSNSで“バズり商品”**として広まっています。

単一商品から総合食品ブランドへ

「輸出から内需へ」という成功体験を踏まえ、北京豊収国際貿易有限公司は多品目戦略を加速させています。黄桃缶詰に加え、みかん、サンザシ、梨の缶詰など新製品を次々に投入。さらに、肉製品、茶葉、椿油といった新カテゴリーにも進出し、「豊収」ブランドの食品ラインナップを拡大しています。

李氏は語ります。「私たちの目標は、良い缶詰をもう一度中国市場に定着させることだけではありません。『豊収』というブランドを、品質と信頼を象徴する国産食品ブランドとして再構築することが使命です。」

半世紀以上の歴史を持つこのブランドは、新時代の消費者ニーズに応えるべく、伝統と革新を融合させ、再び中国の人々の食卓と心をつかもうとしています。

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