中国吉林省延辺朝鮮族自治州に位置する汪清県は、長白山脈の中腹にあり、森林被覆率は80%を超えています。この優れた生態環境と気候条件は、キクラゲの栽培に理想的な土壌を提供しています。「八山一水半草半田」と言われるように、汪清は山が多く、トウモロコシや稲などの大規模栽培には不向きです。しかし、豊かな森林資源を活かし、地元特産のキクラゲ栽培が盛んに行われ、地域住民の収入向上につながっています。

ここ数年、汪清県は地域の自然条件に基づいた産業政策を展開し、「小さなキクラゲで大きな産業」を実現してきました。現在、菌種の研究開発、菌袋の生産、栽培基地の建設、製品加工、設備製造、市場販売、廃菌袋の再利用に至るまで、産業チェーン全体が整備されています。年間栽培量は約6.5億袋、生産量は3.5万トン、年間総産出額は34億元(約680億円)に達しています。
経営モデルとしては、「企業(または協同組合)+農家」という形態を採用。専門企業が農家や低所得者層を取り込み、原材料調達、菌袋製造、栽培指導、製品販売などを一括してサポートするシステムが確立されています。
汪清のキクラゲは、肉厚で黒光りし、食感が良く、まさに天然の山の恵み。国家地理的表示保護製品の認証も取得しており、北京、上海、広州などの大都市のみならず、韓国、日本、東南アジアにも輸出されています。標準化された生産体制とブランド構築により、単なる「製品販売」から「ブランド販売」への転換を実現しています。
小さなキクラゲが農村を変える——延辺のキクラゲ産業は、独自のエコ価値と市場力で山を越え、中国全土、さらには世界へと羽ばたいています。吉林省の現代農業の象徴として、ますます注目されています。