トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」が上海市金山区の工業用地を取得し、独資で新エネルギー車生産拠点を建設する計画を明らかにした。これによりトヨタトヨタは中国で初めて独資生産を実現する日系自動車メーカーとなり、中国の新エネルギー車産業における外資開放政策が本格的な実施段階に入ったことを示している。

上海市土地取引市場の情報によると、レクサス(上海)ニューエナジー有限公司は4月1日、上海市金山区の約112万7800平方メートル(容積率2.0)の工業用地を13億5340万元で落札した。投資強度(=単位面積当たり固定資産投資額)は1畝(約666.7平方メートル)当たり842万元が必要とされる。トヨタ中国が2月5日に発表した声明によると、同社は上海市とカーボンニュートラルに関する包括的提携を締結し、独資会社が2027年から新型EVの生産を開始、初年度10万台規模で約1000人の雇用創出を見込んでいる。
今回の独資工場建設は、過去40年間続いてきた外資系自動車メーカーの「合弁工場設立」という不文律を打ち破った。従来トヨタは中国第一汽車集団と広州汽車集団との合弁企業に生産を依存し、レクサスEVは完全に日本からの輸入に頼っていた。この戦略転換は、中国が2018年に新エネルギー車分野の外資出資比率制限を撤廃した政策が直接影響しており、テスラが2019年に上海スーパーファクトリーで独資メリットを先行体験した後、日系車メーカーとして初の独資プロジェクトが実現したことで、中国先端製造業の開放加速を象徴している。
米中技術競争激化とグローバルサプライチェーン再編の背景で、レクサスの独資戦略には複合的意図が読み取れる。従来中国市場向けレクサスEVは100%日本からの輸出に依存しており、関税障壁やサプライチェーンの断絶リスクに直面していた。現地生産化により納期短縮と不確実性低減が可能となる。新工場では電池開発も含まれており、寧徳時代(CATL)や比亜迪(BYD)など現地サプライヤーとの連携強化が見込まれる。中国製電池採用で車両コストの15~20%削減効果が期待でき、高級車ブランドの価格戦略上、重要な意味がある。上海市の第14次五カ年計画が掲げる「グローバル新エネルギー車ハイランド」構想とも連動するのに加え、カーボンニュートラル目標を共有する地方政府との利益共同体の形成にもつながる。また、1畝(ムー)当たり842万元という高投資強度は、中国政府が先端技術外資プロジェクトに傾斜配分する方針とも符合する。
外資独資メーカー同士を比較しても、テスラとレクサスの中国進出戦略は対照的だ。業界アナリストは「テスラが『破壊者』として独資モデルの有効性を実証したのに対し、レクサスは『深耕者』として日中サプライチェーンの融合深化を推進している」と指摘する。この変化は中国新エネルギー車産業が「政策主導」から「市場主導」へ移行するプロセスを示し、外資メーカーが技術の現地化と戦略的シナジーで持続的成長を目指す必要性を浮き彫りにしている。と同時に、高級車ブランドが中国市場で戦略的位置づけを加速する新たなトレンドの到来を予感させる事例となった。