2025年大阪・関西万博の開催が目前に迫り、関西地域では建設ラッシュが起きている。この動きが日本全国の不動産市場にどのような連鎖反応をもたらすのか、「ポスト万博時代」の不動産構図がここから本格的に始まる可能性がある。
短期:関西圏の不動産は「万博特需」の実現期に突入
中期:産業誘致と都市圏連携により波及効果が拡大
長期:万博レガシーと日本不動産の「再地方化」傾向に注目

2025年の大阪・関西万博は、約2,800万人の来場が見込まれる国際イベントであり、日本の不動産市場にとっても大きな注目材料となっている。インフラ整備の進展、企業の本社機能回帰、観光需要の回復期待などにより、大阪およびその周辺地域の不動産価値に構造的な変化が生じつつある。さらに重要なのは、万博が象徴する国家戦略が「地方再開発」と「生活志向の都市更新」という二つの潮流を促進し、日本全国の不動産地図に再編の波をもたらしている点だ。
短期:関西圏の不動産は「万博特需」の実現期に突入
土地開発ラッシュにより一部エリアで地価が高騰。 万博会場となる夢洲(ゆめしま)人工島を中心に、その周辺の臨海エリアでは、大阪メトロ中央線の延伸や「グリーンスマートシティ」開発計画など、インフラ投資が活発化している。これにより、住宅地および商業地の取引が急増している。
不動産経済研究所のデータによると、2023年から2024年にかけて大阪湾岸エリアの新築分譲マンション価格は約12.7%上昇し、過去10年で最大の伸びを記録した。
観光型投資物件への需要回復、海外投資家の流入継続。 コロナ規制の解除と国際線の正常化を背景に、「西の玄関口」である大阪の魅力が再び注目されている。特に東アジア・東南アジアからの投資家にとって、短期賃貸型の民泊物件は再び人気投資先となりつつある。心斎橋、道頓堀、天王寺といった観光エリアでは、老朽ビルのリノベーション案件が活発化し、利回りは6〜8%で安定している。
さらに、日本観光庁の資料によれば、2024年以降、関西地域における海外投資家による住宅・民泊用途の不動産購入件数は、コロナ前の水準を上回っている。なかでもタイ、台湾、中国本土、香港からの買い手が活発で、一部の物件管理会社は「万博対応型」のサービスを展開。多言語対応のスマートロックや、万博期間中の短期賃貸許可支援などを提供している。
中期:産業誘致と都市圏連携により波及効果が拡大
「未来社会の実験場」がテクノロジーパークの不動産価値を押し上げる。 万博が掲げる「未来社会の実験場」構想では、AI、IoT、グリーンエネルギーなどの先端技術導入が予定されており、大阪南港や堺市といった周辺の産業エリアでは、テック企業の集積が進んでいる。これにより、オフィス物件や研究開発拠点などが空室期から脱却し、消費型から産業研究型市場への転換が始まっている。
交通ネットワーク再構築で京阪神都市圏の価値が再定義、外資系賃貸需要も上昇。 新大阪駅や関西空港駅のリニューアル、夢洲連絡道路、北陸新幹線の延伸計画などが、京阪神の都市構造を再構築しつつある。専門家は、高槻、枚方、尼崎などの通勤圏都市が「通勤+生活」型の衛星都市として注目され、今後の不動産投資のブルーオーシャンとなる可能性があると指摘。大阪中心部を上回る価格上昇が期待されている。
同時に、万博を機に来日する短期滞在の外国人技術者やスタートアップ、国際ボランティアなどの「中〜高所得の流動人口」の増加が、これら都市に安定的な賃貸需要をもたらしており、「投資+賃貸運用」型の物件に対する関心も高まっている。
長期:万博レガシーと日本不動産の「再地方化」傾向に注目
万博レガシーの活用が鍵。東京五輪の施設空洞化を繰り返すな。 大阪万博では、会場跡地の再利用計画として、夢洲をグリーンテクノロジーパークやエコシティに再開発する構想が示されている。これが現実化すれば、地域不動産への持続的な需要を支える可能性がある。一方で、運営体制が不十分な場合は、投資過熱地域における「不動産バブル」リスクも指摘されている。
地方都市の魅力強化が地域不動産の価値再評価を促進。 万博により促進される国家レベルのプロモーション活動は、日本の「地方創生」に新たな追い風となる。専門家の中には、大阪を起点に、奈良、和歌山、滋賀といった周辺の中核都市が、観光・移住人口の受け皿として成長し、「広域関西」の多中心型都市構造が形成されるとの見方もある。これにより、東京圏一極集中だった日本の不動産市場に地殻変動が起こる可能性がある。
大阪万博は都市発展の「ウィンドウ期」であり、それは大阪だけでなく、日本全体にとっても歴史的な転換点となり得る。日本不動産が「東京一極集中」から「多極共振」へと移行する契機となる可能性を秘めている。
海外投資家にとって、大阪は「短期的な民泊収益」の場であると同時に、世界でも稀な「中長期・生活型投資市場」としてのポテンシャルを持っている。トレンドを見極め、バブルを回避し、構造的に価値あるエリアを選ぶことで、「ポスト万博時代」の不動産チャンスをつかむことができるだろう。