不動産市場の活性化と新築物件の在庫解消を目的として、タイ政府はこのほど重要な新政策を正式に承認しました。総額700万バーツ(約148.9万人民元)以下の不動産取引に関する手数料率を、従来の2%からわずか0.01%へと大幅に引き下げるもので、本政策は即日発効し、2026年6月30日まで有効です。これにより、買い手の負担が軽減され、市場の活性化が期待されるほか、不動産がタイの基幹産業であるという戦略的位置づけが一層強化されることになります。

タイ財務省のポンポン副大臣は記者会見で、本政策の対象となる不動産には、一戸建て、タウンハウス、コンドミニアム、ロードサイド店舗、関連土地など多岐にわたると説明しました。現在、タイの不動産市場、特にバンコク周辺や観光都市では在庫圧力が高まり、新築物件の販売が鈍化しています。今回の措置は、中間層および初めて住宅を購入する層を正確にターゲットとし、取引コストの引き下げを通じて市場の流動性を促進するものです。
この政策は、タイ政府がこれまで実施してきた減税・費用軽減を通じた不動産支援策の延長線上にあります。データによれば、2020年の新型コロナウイルス流行時に導入された不動産税減免政策により、当年の取引件数は前年比15%増加しました。今回の引き下げはそれ以上に積極的で、取引手数料がほぼ「ゼロ」に近づく形となっており、総額700万バーツの住宅では、買い手が約13.9万バーツ(約2.96万人民元)の取引コストを節約できます。
市場では、今回の政策により、主に三つの層の買い手の参入が期待されています。すなわち、コスト低下によって購入を早める地元の初回購入者、保有コストの低さと安定した賃貸収益に注目する長期投資家、そして為替と政策優遇の二重のメリットを受けられる外国人投資家です。人民元に対してバーツが軟調な状況が続く中で、タイ不動産は外国資本にとってより魅力的になっています。
長期的には、タイ不動産市場の投資ロジックは引き続き堅調とされています。東南アジアの主要観光地であるタイでは、インバウンド観光客数が回復基調にあり、2023年には2800万人を突破、2024年には3500万人に達する見込みです。プーケットやパタヤなどの観光地では、コンドミニアムの年間平均賃貸利回りが5〜8%と、東南アジア地域の中でも高水準を維持しています。また、バンコクの鉄道路線の延伸や中タイ高速鉄道(昆明〜バンコク区間)の建設など、交通やインフラ整備が進行中で、新興エリアの不動産価値向上が期待されています。東部経済回廊(EEC)には多くの外資企業が進出しており、住宅需要をさらに押し上げています。
さらに、タイは外国人の不動産購入に対する制限が比較的緩やかで、外国人がコンドミニアム(1プロジェクトあたりの外国人保有率は49%以下)を永久所有権で購入でき、キャピタルゲイン税も課されません。「エリートビザ」や「長期滞在ビザ(LTR)」といった制度も整備され、海外の買い手に制度面での支援を提供しています。政治情勢は安定化し、インフレ率も1〜3%に抑えられており、不動産はリスクヘッジ資産としての特性も備えています。
業界関係者の予測によると、今回の手数料引き下げ政策により、2024年下半期には全国の不動産取引件数が20〜30%増加する可能性があります。チェンマイやホアヒンなど、リゾート地としての性格を持つ地方都市での販売状況も大幅に改善するとみられています。多くのデベロッパーは、分割払い、家具プレゼントなど、さまざまな販売促進キャンペーンを展開し、購入のハードルをさらに下げています。
一方で、専門家は投資家に対し、政策の時限性と一部エリアにおける供給過剰リスクに注意するよう呼びかけています。特に交通ハブ沿線や、インフラ計画が明確な新興地域を優先的に選ぶことで、保有リスクを抑え、資産の流動性を高めることが推奨されています。
業界では、今回の「手数料引き下げパッケージ」は単なる短期的な景気刺激策にとどまらず、タイ政府が不動産産業の戦略的価値を再認識している表れであると受け止められています。海外投資家にとっては、「低手数料・安バーツ・高利回り」が揃ったこのタイミングが、タイ資産に投資を行う絶好の機会といえるでしょう。