近年、中国人観光客の訪日旅行市場は大きな変化を遂げています。旅行先の嗜好だけでなく、旅行者層や消費パターンも一新されつつあります。かつては日本の三大都市圏(東京・大阪・名古屋)に集中していた中国人観光客は、今や小都市への関心を高め、新たなスタイルで日本を探索しています。

旅行先の嗜好変化:都市部から小都市へ これまで、90%以上の中国人訪日客は東京・大阪・名古屋といった三大都市圏に集中し、華やかな都市景観と豊富なショッピング資源が主な魅力となっていました。しかし、今年に入ってから状況は大きく変わりました。中国人観光客は伝統的な人気都市にとどまらず、次々と日本各地の小都市へと足を延ばしています。これまであまり知られていなかった小さな町にも、中国人観光客の姿が目立つようになりました。
これらの小都市は、独自の自然景観、豊かな歴史文化、そして静かな生活環境を有しており、深い体験型旅行や個性的な旅を求める中国人観光客を惹きつけています。彼らは小都市の古い街並みを歩き、本場の日本料理を味わい、地元の風土に触れ、都市の喧騒から離れた快適な旅を楽しんでいます。
旅行者層と消費パターンの変化:若年層の台頭、多様化する消費傾向 旅行先の変化に加え、訪日中国人観光客の構成にも静かな変化が起きています。かつて主力だった中高年層(いわゆる「叔叔阿姨」世代)は、今や80年代~00年代生まれの若者たちに取って代わられています。若い世代の観光客は、1人あたりの平均消費額こそ減少しているものの、まったく新しい旅行消費スタイルを見せています。
データによると、1月から3月までに訪日した中国人観光客236万4900人のうち、1人あたりの平均消費額は22万2000円(約1万1400元)でした。以前よりも消費額は低下しているものの、自由旅行(個人旅行)の割合が大幅に増加しています。彼らはもはや団体旅行による表面的な観光に満足せず、自由に行程を組み立て、現地での生活体験を重視する傾向を見せています。この自由旅行志向が、小都市への旅、いわば「田舎旅」をさらに加速させています。
訪日旅行熱の高まり:複数要因が後押し 中国人観光客の訪日熱が高まる背景には、複数の要因が存在します。まず、円安の進行により旅行コストが下がり、ショッピングや宿泊などの支出がより割安になったことが挙げられます。さらに、ビザ取得の簡素化政策が進み、申請手続きがスムーズになったことも大きな要因です。加えて、航空路線の多様化と航空券価格の低下により、旅行計画が立てやすくなっています。また、中国と日本は地理的にも近く、文化的な親和性も高いため、旅行中の安心感や親近感も強く感じられる要素となっています。
さらに、タイ旅行ブームの沈静化も一因です。本来タイ行きを予定していた一部の観光客が、代替先として日本を選ぶようになりました。ゴールデンウィーク(五一労働節)こそまだ始まっていないものの、現在発表されているデータからも、日本が再び「最大の勝者」となることは間違いありません。旅行予約数の増加、ホテルの稼働率上昇といった動きからも、今後の訪日中国人観光客数のさらなる増加が期待されています。
訪日旅行ブームは今後も続く見込み 中国人訪日市場の成長見通しは依然として明るいものです。日本政府観光局の統計によれば、2025年1月~3月の期間における訪日外国人旅行者数は1053万7300人に達し、2024年同期比で約80%増となっています。
今後、中日両国の観光交流・協力の深化、観光資源のさらなる発掘と統合、そして観光サービスの持続的な改善・高度化が進めば、より多くの中国人観光客が日本を訪れることになるでしょう。華やかな都市の現代的な魅力も、静かな小都市の古風な佇まいも、それぞれ異なる年齢層や消費ニーズを持つ旅行者たちを引き付け続けることでしょう。
今後も中国人観光客による訪日旅行ブームは続き、日本の観光市場には新たなチャンスと課題が訪れると予想されます。多様化する中国人観光客のニーズにどう応え、より良い旅行体験を提供していくかは、日本の観光業界にとって引き続き重要な課題となるでしょう。