2026年5月17日、在日長春总商会が主催する「健康のためのセミナー」が、東京・綾瀬の長春会館で開催された。袁林(えん・りん)会長が開会の挨拶を述べ、執行会長の王剛(おう・ごう)氏が会議の司会進行を務めた。参加者たちは健康というテーマをめぐり、学びと交流を深めた。

自己紹介のセッションでは、王雲発(おう・うんはつ)氏が日本語能力試験N2合格に向けた直前対策講座を紹介した。また、元日本語教師や貿易業の経験を持つ参加者、往診治療の経験があり現在神保町の再生医療関連クリニックに勤務する王恵子(おう・けいし)氏、オーストラリアから来日し日本の中小企業の海外進出サポートに尽力している沈衛国(しん・えいこく)氏など、多様な分野から集まった参加者がそれぞれの経験や活動について語った。
今回のセミナーのメイン講義は、中華予防医学会研究員の王芃(おう・ほう)氏が講師を務めた。王氏は予防医学の視点から、健康寿命をいかに延ばすかについて体系的に解説した。現代の健康管理において最も重要なのは、単に長生きすることではなく、病気の治療や介護に依存せず、自立して生活できる「健康寿命」をいかに延ばすかであると強調した。

平均寿命と健康寿命の違い
王氏はまず、平均寿命と健康寿命の概念を整理した。平均寿命は統計的に算出された社会全体の指標であり、すべての人がその年齢まで生きられるわけではないと説明。仮に長寿を達成したとしても、人生の後半に長期間病気を患ったり介護が必要な状態が続いたりすれば、生活の質(QOL)は著しく低下する。そのため、現代の健康管理の核心的な目標は、健康で自立した、活力のある期間をできるだけ長くすることにあるとした。
一次予防:生活習慣こそが核心
王氏は、健康に影響を与える要因は医療設備や医療サービスだけでなく、日々の生活習慣が極めて重要であると述べた。医療の進歩だけで健康寿命を大幅に延ばすことには限界があり、食事、運動、睡眠、精神状態、喫煙・飲酒、座りっぱなしの習慣などの改善こそが「一次予防」の核心であると説明。病気になってから治療するのではなく、病気になる前に予防する――これこそが予防医学の基本思想であると強調した。
講義の中で、王氏は以下の5つの質問からなる簡易的なセルフチェック法を紹介した。
- 週の運動時間が150分未満であるか?
- 睡眠時間が7時間未満であるか?
- 外食やデリバリー利用の頻度は高いか?
- ここ3ヶ月間で、不安や気分の落ち込みを感じたか?
- 喫煙習慣がある、または1日8時間以上座りっぱなしであるか?
王氏は、これらの項目を通じて、自分の「健康年齢」と実際の年齢とのギャップを意識することができると述べた。
食事・運動・睡眠:健康を支える三本柱
食事について、王氏は良質なタンパク質を摂取することの重要性を強調した。筋肉量を維持するにはタンパク質の摂取と運動の両方が必要不可欠であり、どちらが欠けてもいけない。また、魚、卵、肉類、豆類、大豆製品が優れたタンパク質源であり、同時に、野菜、果物、豆類、穀物などをバランスよく摂り、加工食品や過剰な糖分の摂取を減らすべきとした。
運動について、王氏は単に歩いたり走ったりするだけでは不十分な場合があると指摘。有酸素運動だけでなく、加齢に伴う筋力低下を予防するために、筋力トレーニングやレジスタンス運動を取り入れるべきとした。ラケットスポーツや水泳などは、身体の協調性、柔軟性、反応速度、筋肉の俊敏性を高めるのに非常に有効であるとし、同時に、中高年層に対しては、運動時の心拍数や血圧に注意し、無理のない安全な範囲で行うよう注意を促した。
睡眠について、王氏は単に時間の長さだけで判断すべきではなく、翌日の生活や仕事に支障が出ていないかがより重要であると述べた。「眠れない」という焦り自体が悪循環を生む可能性があるため、過度に心配せずに、自然に任せるという心構えで睡眠と向き合うべきだとアドバイスした。
心の健康と社会的つながり:見落とされがちな健康の側面
王氏はさらに、健康とは身体的なものだけでなく、心の健康や社会的なつながりも含まれると指摘した。同郷の仲間が集まって楽しく会話すること自体が心の健康維持に役立ち、社交や人とのつながりは一次予防における重要な柱の一つであると述べた。また、音楽、瞑想、座禅、茶道、マインドフルネスなど、自身の状況に合わせてリラックスできる方法を見つけ、心を穏やかに保つことが有益であると言及した。
検査・ワクチン・血管の健康:早期発見と早期予防
王氏は近年の予防医学のトレンドについても紹介した。腸内環境と慢性疾患の関係、プロバイオティクスの役割、抗生物質の慎重な使用、抗ウイルス薬の使用タイミング、ピロリ菌検査、帯状疱疹ワクチン、リポタンパク質(a)[Lp(a)]、アポタンパク質B(ApoB)、高血圧管理などに触れた。病気が発生してから対処するのではなく、先進的な検査や医学知識を活用して、リスクを早期に発見すべきだと強調した。
特に血管の健康に関して、王氏は生活習慣だけでなく、遺伝的要因や体内の慢性炎症反応も影響を与える可能性があると指摘。Lp(a)やApoBなどの指標は、通常の健康診断では気づきにくい血管のリスクを発見するのに有効であるとした。また高血圧については、薬によって血圧が安定していても、自己判断で服用を中止せず、必ず医師の指導に従うよう強く念を押した。
知識を行動に変える
最後に王氏は、健康に関する知識を得るだけでは不十分であり、それを日常生活に落とし込み、長期的に継続することが何よりも重要であると強調した。健康リスクがすぐに目に見えて現れるわけではないため、生活習慣を変えるのが難しいが、だからといって諦めるべきではないと語った。変化は一朝一夕に成し遂げる必要はなく、まずは「いつもより少し多く歩く」「少し早めに寝る」「野菜をもう一品食べる」「タバコを一本減らす」といった、小さな習慣を一つ変えるだけでも、十分に意味があると締めくくった。
今回のセミナーは、在日長春出身者や関係者にとって、健康寿命に関する知識を学び、自らの生活習慣を見直し、交流を深める絶好の機会となった。




