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水曜日, 2025-07-30
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中国の高齢者向けおもちゃ、日本で大ヒットし品切れ続出

高齢化社会における新たな成長分野、「高齢者おもちゃ」が注目の的に

世界的に高齢化が進む中、これまで見過ごされてきた消費市場——高齢者向けおもちゃが、「ニッチ商品」からシルバー経済を牽引する重要な成長エンジンへと急速に変貌しています。データによると、祝日やイベント時の消費で、89%の消費者が成人向けにおもちゃを購入し、そのうち20%は高齢者向けの商品を選ぶと回答しています。適齢おもちゃの潜在力が解き放たれつつあり、多くの中国企業が海外市場への展開を加速させています。

日本で大ヒット、中国ブランド「ミミ智康」が注文殺到・前年比50%増

世界で最も高齢化が進んでいる日本は、高齢者向けおもちゃ市場における最前線。浙江省麗水市発の中国ブランド「ミミ智康(MIMI Zhikang)」は、この動きをいち早く捉え、高齢者向けの知育木製おもちゃに特化。2023年の設立以来、急速に日本市場で存在感を高めています。

2025年第1四半期には、同ブランドの輸出販売が前年同期比で50%増を記録。日本、韓国、東南アジアなどへ輸出され、日本国内の介護施設とも提携し、5つの高齢者施設に導入されるなど、オンライン・オフライン両面で販路を拡大中です。

シルバー経済が新たなブームに、鍵を握るのは製品の革新性

「ミミ智康」の親会社である浙江金馬工芸品有限公司は、もともと子ども向けの知育木製おもちゃを主力とする企業でしたが、近年は戦略を転換し、ターゲットを中高年層にシフト。現在は以下の6つのブランドを展開しています:

ミミ智康(高齢者ケア・健康玩具)

ミミ智玩(知育玩具)

優優象(教育用教具)

m&i(保育関連)

智礼、TOPBRAIN(高級オーダーメイド)

各国の高齢者ユーザーの嗜好に合わせ、カスタマイズ製品も展開。例えば、ドイツ市場向けには高品質の木製チェスセット、日本向けには人気の「けん玉」専用ラインを設立するなど、現地ニーズへの対応を徹底しています。

ECでも検索数上昇、遊びから「リハビリ」へと進化する高齢者おもちゃ

Amazonなどの海外ECサイトでは、「elderly toys(高齢者用おもちゃ)」という検索キーワードの人気が上昇中。単品販売数こそ多くはないものの、利益率は高く、たとえば中国の1688サイトでは出荷価格が0.67〜9.5元に対し、Amazonでは10米ドル以上で販売されており、高い価格差が見られます。

商品カテゴリーとしては、以下の2大分野が主流です:

運動系:卓上ピンポン、リストエクササイズボール、輪投げ、パンチトレーナー

知育系:数字迷路、ストーリーゲーム、スマートボードゲーム、テーブルゲームなど

研究では、適度な「プレイセラピー(遊戯療法)」が高齢者の孤独感やうつ症状を緩和し、身体・認知機能の改善に寄与することが証明されています。特に介護施設やリハビリセンターでの活用が注目されています。

市場は“ブルーオーシャン”、真に高齢者向け製品はまだ少ない

市場の可能性は大きいものの、現在流通している商品の多くは子ども用玩具の「焼き直し」。調査によれば、高齢者の体力・認知力・関心に配慮して設計された製品は全体の5%未満。87%の“高齢者玩具”は、実際には子ども向け商品のバリエーションに過ぎず、機能や体験にギャップがあります。

中国では老年玩具市場の立ち上がりが比較的新しく、2020年には北京市通州区に中国初の高齢者玩具専門店「老有所玩」が開店。「高齢者のための癒しの雑貨店」として話題になった一方で、業界全体の供給不足も浮き彫りになりました。

政策支援と日中協力が、海外進出の追い風に

日中両国による第六回経済ハイレベル対話では、「高齢者介護と福祉分野での協力強化」が合意されており、日本市場に向けた中国企業の進出に政策的な後押しが期待されています。

シルバー経済の拡大を受け、中国企業にとって今がまさにチャンス。真の“高齢者向け”製品をいち早く開発・提供できる企業が、グローバルな高齢社会における新たな消費地位を確立することでしょう。

結びに
高齢者が求めているのは「子どもの思い出」の再現ではなく、「尊重・挑戦・つながり」を感じられるライフスタイル。おもちゃは単なる娯楽ツールではなく、健康・社交・尊厳への新しい架け橋です。次の世界的ヒット商品は、もしかするとこの素朴な木のおもちゃにあるのかもしれません。

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