世界の半導体サプライチェーンが地政学的な緊張と技術競争の交錯の中で絶えず再編される中、アップルとサムスンの米国における動きは、最新の焦点となっている。
「投資による関税回避」と呼ばれるこの大勝負において、アップルとサムスンは米国で前例のないチップ協力に着手した。時を同じくして、サムスン電子はテスラとの巨額な受託製造契約に合意した後、米国への追加投資として数十億ドルを投じ、ハイエンドパッケージング分野での先行的な布陣を敷く意図を表明した。これら一連の動きは、半導体サプライチェーンの国産化を求める米国政府の強い要求と、韓国企業が投資を通じて市場へのアクセスを得ようとする戦略的な思惑を明らかにしている。

ソニーの独占体制を打破
報道によると、アップルはテキサス州オースティンの半導体工場でサムスンと提携し、「世界初となるチップ製造の新技術」を開発し、将来のiPhone製品に適用する計画だという。関係者によると、両社の協力の具体的な内容は、iPhone用のイメージセンサーを米国で生産することで、早ければ2026年のiPhone 18で実現する可能性がある。サムスンがアップルのためにISOCELLイメージセンサーを製造することになる。
このニュースは市場に衝撃を与えた。長らくアップルのiPhone向けイメージセンサーは、日本のソニーにほぼ完全に依存してきたからだ。ソニーは世界のCMOSセンサー市場で50%以上のシェアを占め、不動の地位を築いており、サムスンは約15%で2位につけていた。この提携が実現すれば、ソニーはアップルとの独占的な関係を失い、サムスンはハイエンドセンサー市場での存在感を高める機会を得ることになる。
複数のアナリストは、アップルのこの動きは単なるサプライチェーンの多様化だけではなく、米国がまもなく導入する輸入チップへの関税政策と密接に関連していると指摘する。ソウル祥明大学のイ・ジョンファン教授は、「ソニーは米国に工場を持っておらず、関税が実施されれば、日本のメーカーは重大な課題に直面するだろう。アップルが米国に生産能力を持つサムスンをより優遇するのは、政策に後押しされた自然な結果だ」と述べた。
これに対し、ソニーは、大判・高密度センサー技術によって引き続き優位性を保つ自信があると強調した。
テスラからの165億ドル受注がサムスンに復活の機会を与える
アップルとの提携に加え、サムスンは最近、もう一つの重要な転機を迎えた。7月末、サムスン電子はテスラと165億ドルに達するチップ製造契約を締結し、契約期間は2033年末までとされた。契約内容によると、サムスンのテキサス工場がテスラ専用のAI6チップを製造するという。イーロン・マスク氏は「これは最低金額に過ぎない」とまで述べている。
この受注は、サムスンの受託製造事業における近年最大のブレークスルーであるだけでなく、これまでTSMCとの競争でたびたび敗北を喫してきたサムスンのファウンドリ部門を直接活性化させた。これに刺激され、サムスンは米国に70億ドルを追加投資し、新たな先進チップパッケージング工場を建設すると発表した。これは、テイラー工場に続き、サムスンが米国で半導体事業を強化する上でまた一つの大きな動きとなる。
サムスンがTSMCに先行
現在、米国国内にはハイエンドチップパッケージング工場がなく、TSMCなどの関連施設が稼働するのは早くても今世紀末になる見込みである。サムスンが先行して稼働させることができれば、市場の空白を埋めるだけでなく、NVIDIAやAMDといったハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)の顧客を引きつけ、先進パッケージング分野におけるTSMCの独占的な地位に直接挑む可能性がある。
TSMCの「製造・パッケージング分離」モデルとは異なり、サムスンは「設計・製造・パッケージング」の一体化を強みとしている。この統合モデルはAIチップ分野で特に重要であり、納期の短縮とコスト削減を可能にする。
あるアナリストは、「アップルからの受注からテスラとの提携、さらに70億ドルのパッケージング投資に至るまで、サムスンは『米国の窓』を利用して受託製造の競争力を再構築している」と指摘している。
韓国企業の戦略的賭
先日、トランプ前米大統領は輸入チップに100%の関税を課す可能性を示唆した。この背景のもと、アップルとサムスンの提携、サムスンとテスラとの契約、そして韓国企業による米国への継続的な投資は、いずれも「投資による関税回避」という駆け引きだと解釈されている。サムスンにとって、TSMCと競争する一方で米国の政策にも対応しなければならない状況は、挑戦と機会が共存するものである。




