10.5 C
Tokyo
土曜日, 2025-12-06
spot_img

【観察】ピックアップトラック「ハイラックス」が先導トヨタ、東南アジア戦略の要となる車種ラインナップを刷新

(アジア財経インサイト記者 九日/東京 11月16日)

トヨタ自動車は、世界で展開する戦略的ピックアップトラック「ハイラックス(Hilux)」を10年ぶりにフルモデルチェンジし、タイの生産拠点を中心に新興国市場での販売を本格化しました。この動きは、東南アジアをはじめとする新興市場での展開を加速させ、徹底した現地化戦略を通じて競争力の強化を図るトヨタの決意を反映しています。

11月10日、トヨタはタイの首都バンコクで新型ハイラックスの世界初公開イベントを開催し、会場に登場した新型車は熱い注目を集めました。トヨタのチーフ・ブランディング・オフィサー(CBO)を務めるサイモン・ハンフリーズ氏は、「新型ハイラックスは、世界中のユーザーの声を広く取り入れ、全面的に進化を遂げました。私たちが長年にわたり信頼を築いてきた礎が、新たな段階を迎えた」と述べました。

{“trace_info”:{“originItemId”:”7574304289523289382″},”aigc_info”:{“source_info”:”dreamina”,”aigc_label_type”:0},”data”:{“os”:”ios”,”product”:”dreamina”,”exportType”:”generation”,”submitId”:””,”taskId”:””,”pictureId”:”7574304289523289382″,”editType”:”ai_image”,”appVersion”:”1.7.6″,”templateId”:””,”launchMode”:”other”,”videoId”:””,”disableAwemeAnchor”:false}}

■ なぜピックアップか? 「ハイラックス」が担う新興市場の「要」

今回フルモデルチェンジを果たした新型ハイラックスは、タイのチームが開発を主導したもので、2015年以来の大幅な刷新です。エンジン性能や内外装が向上し、欧州の排気ガス規制「ユーロ5」にも対応。新型ディーゼルモデルの燃費は最大8%向上したと発表されています。タイ市場では既に販売が開始され、価格は77万4,000タイバーツ(約330万円)からとなっています。

さらに、ハイラックスシリーズにはEVバージョンも追加される予定です。トヨタがタイで生産する初の量産型純粋EVとして、2025年末の商用化を目指しており、航続距離は300km以上、価格は149万タイバーツ(約640万円)からを見込んでいます。

トヨタのアジア本部長、前田昌彦氏は、「タイを母体となる生産拠点(マザー工場)と位置づけ、その後、アルゼンチンや南アフリカなどでも順次、新型ハイラックスの生産を開始していく」と説明しました。

ハイラックスはトヨタの新興市場戦略において極めて重要な車種です。タイ工場での年間生産台数は30万台を超え、そのうち輸出比率は71%に達し、東南アジア、中東、オーストラリアなど130以上の国と地域に供給されています。特に、部品の現地調達率は95% に及んでおり、生産から研究開発、収益性の向上に至るまで、強固な強みを発揮しています。

1968年に初代モデルが登場して以来、ハイラックスは9世代にわたって進化を続けてきました。これはトヨタのグローバル戦略車シリーズ「IMV」の中核をなすモデルで、2024年のIMVシリーズの世界販売台数は83万台(トヨタ全体の約8%を占める)に上り、そのうちハイラックスが約7割を貢献しています。

アーサー・ディ・リトル・タイランドのパートナー、自動車業界の専門家である内田博教氏は、「ハイラックスは、インフラがまだ十分でない地域において重要な役割を果たし、実用的な交通手段として世界各地に普及する鍵となっている」と指摘しました。

■ なぜタイなのか——優位性と市場への波及効果

ハイラックスの最大の生産工場はタイに位置しており、2024年の同工場の生産台数は30万台を突破しました。そのうち約71%の車両が、東南アジア、中東、オーストラリアなど130以上の国と地域の市場に輸出されています。

現在、ハイラックスの部品の約95%がタイ国内で現地調達されています。このピックアップトラックは、利益率が高いだけではなく、トヨタ自動車の他の複数の車種と共通の生産プラットフォームを共有しています。

ハイラックスは1968年に初めて発売され、2004年にトヨタの「IMV(革新的な国際多目的車)」戦略車種プロジェクトの製品ラインナップに組み込まれました。2024年のIMVシリーズの世界販売台数は83万台に達し、トヨタの総販売台数の約8%を占めており、そのうちハイラックスの販売台数はIMVシリーズ全体の約70%を占めています。

アーサー・D・リトル・タイランド社の内田博教氏は、「ハイラックスはタイ国内およびグローバル・サウスのその他の地域で長年人気を集めています。道路や電力などのインフラが未整備な地域において、このピックアップトラックは人々の日常生活を支える重要な移動手段となっているの」と指摘しました。

 なぜ“今”なのか——新興国市場での販売減速への対応が急務

上記のような背景に加え、トヨタ自動車自身にとって、新興国市場での販売台数の回復は喫緊の課題となっています。タイでは、ピックアップトラック市場の規模が急速に縮小しており、2022年から2024年の間に販売台数が前年比で56%減の約20万台にまで落ち込んでいます。

ピックアップトラックだけでなく、新興国市場では、これまで日本車メーカーが得意としてきたガソリン車やハイブリッド車(HV)も、以前のような販売増を維持することが困難になりつつあります。中国車メーカーが欧米への輸出における貿易障壁の高まりを受け、新興国市場の需要に注目し、BYD(比亜迪)などの中国勢が低価格のEVやプラグインハイブリッド車(PHV)の販売を拡大しており、日本車メーカーの強力な競争相手となっています。

トヨタのタイ法人によると、タイの新車販売に占める日本車のシェアは8月に68%まで低下し、2020年頃の約90%から大幅に下落しました。一方、中国車のシェアは23%に上昇し、1年前から約7ポイント増加しています。

市場の大きな変化に対応するため、トヨタは2026年にインドで新工場を稼働させる計画など、新興国市場での事業強化策を進めています。

新型ピックアップトラック「ハイラックス」が「走り出し」ました。このことは、トヨタが東南アジアなどの新興市場へのコミットメントを改めて示しすものです。しかし、激化する競争を勝ち抜くことができるのか。今後の行方が注目されます。

- Advertisement -spot_img

LATEST ARTICLES