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土曜日, 2025-12-06
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【観測】留学生限定の値上げ始まる:日本留学の「費用対効果」に再考の波

(アジア財経インサイト記者元音東京報道)2025年11月末、東北大学は2027年度から外国人留学生の学費を現在の535,800円(約24,379人民元)/年から900,000円(約40,936人民元)/年に引き上げることを発表しました。約1.7倍の大幅値上げで、注目されるのは日本人学生の授業料は据え置かれる点です。日本の国立大学で初めて、留学生に対して明確な差別的料金設定が導入される事例となりました。この発表は社会から大きな注目を集めるとともに、日本の留学における「高い費用対効果」という従来の評価が見直される契機となりそうです。

本稿では、国際比較という「横」の比較、歴史的変遷という「縦」の比較、実務的アドバイスという三つの視点から、この政策変更が日本留学を考える中国の学生に与える影響を分析します。

横の比較:欧米豪加と比べ、「低コスト優位」は縮小へ

これまで長年、日本の国立大学は「授業料が安く、総費用が低い」ことから、アジアの学生に人気の選択肢となっていました。2019年のデータによれば、日本の国公立大学の年間学費は約54万円(約27,000人民元)であり、留学生に対しても自国学生と同額という政策は、世界的に見て稀でした。

しかし欧米諸国との比較では、日本の優位性はもはや明確ではなくなりつつあります。伝統的な留学先であるアメリカの教育費用は引き続き高い。2024‐25年度の米トップ100私立大学の平均授業料は年間64,491ドル(約46万人民元)、州立大学の州外出身者向け授業料も同39,972ドル(約28万人民元)に上ります。授業料は3年前と比べ平均5〜8%上昇しており、世界最高水準ではあるものの、留学生向けに多額の奨学金や研究・教育助手(RA/TA)の機会も提供されています。

イギリス、カナダ、オーストラリアなどの国々も、留学生に対して国内学生より大幅に高い授業料を設定しています。学士・修士課程では通常年間20万~35万人民元(約430万~750万円)、ビジネス・医学などの専門分野では年間40万~60万人民元(約850万~1280万円)に達することもあります。

それでも、最近の日本の「値上げの波」(東北大学に代表される)の傾向を考慮し、仮に学費が年間90万円に上がったとしても、総学費・生活費の絶対額では欧米の人気留学先国よりもやや低いかもしれません。しかし、「かつての圧倒的な安さ」という優位性は明らかに薄れつつあります。

留学プランナーとして15年の経験を持つフィオナ氏は、「日本の留学の費用対効果の優位性は以前ほど明らかではなくなり、『絶対的な低価格』から『中価格帯』へ移行するでしょう」と指摘。予算が限られ、最低費用で海外学位を取りたい学生にとっては、フランスや北欧など授業料無料・低額の国の魅力がさらに高まる可能性があるとしています。

縦の比較:

5年で留学費用は持続上昇、「均一授業料の時代」の終わり

現在、東北大学を含む日本の国立大学の学士・修士課程の留学生授業料は、年間約535,800円であり、国籍にかかわらず同一料金が適用されています(一部の専攻を除く)。

しかしこの2年間、一部の大学・機関は既に動きを見せました。政府が国立大学の留学生授業料上限規制を緩和したことで、各大学が独自に留学生料金を設定できるようになったのです。

2027年以降、東北大学が留学生の費用を年間90万円に値上げすると明確に打ち出したことは、国立大学として初の明確な「国籍による差別的料金設定」が出現したことを意味しています。

総じて、過去3〜5年に比べ、日本の留学総費用は着実に増加する傾向にあり、「均一料金・低授業料」から「差別料金・コスト回収型」への制度転換が進んでいます。さらに物価、家賃、保険料の年々の上昇を考慮すると、今回の授業料改定で最も影響を受けるのは、アルバイトに頼る低予算の留学生でしょう。

実務的アドバイス:留学プランナーが提言する4つのポイント

一つ目は事前の総費用計画。「値上げ後、日本の総支出は欧米の一部の中堅大学に近づく可能性があります。日本留学を検討する学生・保護者は、必ず3年または5年分の総費用を事前に計画してください」とフィオナ氏は助言しています。

二つ目は資金援助の積極的な獲得。留学費用の上昇に伴い、奨学金・助成金の申請や、学内外でのアルバイト機会の確保がこれまで以上に重要になります。経済的に余裕がなくても、学業成績・研究・語学力に優れた学生は、資金援助を得ることで負担を大幅に軽減できます。

三つ目は留学目標の明確化。フィオナ氏は「日本を長期的なキャリア展開、移住、あるいはその教育・地理的優位性を活かす場と考えるなら、比較的高い費用を支払う価値はあるかもしれません。しかし、『節約して学位だけ取得したい』のであれば、費用対効果を真剣に比較検討すべき」と述べています。

四つ目は情報のリアルタイムでの確認。今回の東北大学の差別的料金導入を機に、他の国立大学も追随する可能性が高いです。出願前には必ず大学が公式に発表した最新の料金ポリシーを確認し、留学生向けの追加費用や特別規定の有無に注意を払う必要があります。

【記者コメント】

「低価格の選択肢」から「品質競争」への転換期

元音

東北大学が今回実施した国際学生に対する授業料の1.7倍の値上げ、およびそれに対応する差別的な料金制度は、日本の高等教育システムにおける国際的な学生募集、コスト管理、そして国際化戦略における重大な転換点です。

その背景には、日本の高等教育システムにおける構造的な変化があります。これまで国公立大学は留学生と国内学生に同一の学費を適用していましたが、外国人留学生の増加、教育および生活支援コストの上昇に加え、インフレや物価高騰といったプレッシャーに直面し、大学と政府は料金制度の改革を決断しました。

大学自体にとって、この変更は「ウィンウィン戦略」となる可能性があります。授業料値上げで得られる収入増を国際的な教育環境・サービス・インフラの改善に充てつつ、単なる「人数」や「安価な労働力」としてではなく、「質が高く国際競争力をもたらす留学生」の獲得へとシフトできるためです。

日本留学市場全体で見ると、「低コスト」というラベルは薄れ、「高品質」というラベルが強まる可能性があります。

中国をはじめとするアジア諸国の留学生にとって、この変化は、学校選び、予算、目標設定において、より慎重かつ合理的な計画を促すことになるでしょう。

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