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(年末の考察)スシローが再び「行列経済」を巻き起こす:中国の“第二の成長”を深く読み解く

(アジア財経オブザーバー記者・九日 16日東京発)

リード|この世界は、どうなってしまったのでしょうか

この一年、世界はニュースであふれていました。

市場は日々揺れ動き、政策は次々と打ち出され、技術は加速度的に進化し、資本の流れとデータの更新は止まることを知りません。

しかし、こうした喧騒のただ中で、一つの根源的な問いが、ますますくっきりと浮かび上がり、その切実さを増しています。すなわち、

この世界は、いったいどうなってしまったのでしょうか?

なぜ貨幣はこれほど潤沢なのに、人々の「豊かさの実感」は薄いままでしょうか?

なぜマクロ経済政策が続々と導入されているのに、身近な暮らしの不安は消えないのでしょうか?

なぜ技術のフロンティアは日々拡大しているのに、生活の安心感はますます揺らいでいるように感じるのでしょうか?

なぜ市場の物語は相変わらず賑やかなのに、リアルな経済のストーリーは語りにくくなっているのでしょうか?

こうした問いは、国境を越え、あらゆる階層に広がっています。

欧米でもアジア・アフリカ・ラテンアメリカでも、大国でも小国でも響き渡り、企業の決算書、家庭の選択、そして一人ひとりの人生設計にまで深く響いています。それは特定の出来事による衝撃ではなく、「かつては当然とされたルールが、一斉に機能しなくなってきた」ことによる、広範で実感を伴うギャップなのです。

その実態に迫るため、私たちはこの「年末インサイト」を始めました。

単純な答えを示すのではなく、具体的で微細な現実の現場に立ち返る決意を新たにしたからです——

企業の損益分岐点、家庭の家計簿、政策が試される場、市場の逡巡の瞬間、そしてZ世代の「過当競争」と「寝そべり(諦め)」の間で揺れる心の動き──

それら一見バラバラに見えるシグナルをつなぎ、その背後に潜む呼応し合う脈絡を探って行こう。

世界が何らかの困難に直面していると言うのならば、それは世界が突然悪くなったからではありません。むしろ、私たちが古い時代の「設計図」を手にしたまま、根本的なロジックが組み替えられてしまった時代を測ろうとしているからかもしれません。

これこそが、私たちが記録し、提示しようとしている、「今」という世界についての深い問いなのです──

この世界は、どうなってしまったのでしょうか。

12月6日、日本の回転寿司大手スシローが上海・環球港と中山公園・龍之夢に同時オープンした「ダブル首店」は、いずれも10時間超の大行列となった。

2012年に上海で一度撤退したスシローは、その後3年にわたり中国南部および新一線都市での検証型拡張を経て、より成熟したサプライチェーン、より積極的なローカル戦略、高密度のマーケティング戦術を武器に、中国で最も競争の激しい都市に戻ってきた。2025年9月時点で、スシローは中国本土に63店舗を展開し、海外市場は親会社F&LCの収益成長の主要エンジンとなっている。

ネットユーザーが「郎の誘惑」と呼ぶこの消費熱狂の背後には、中国市場の需要構造変化、デフレ傾向、若年層の文化体系に対し高い適応力を示した日本外食企業の姿がある。ビジネスモデルから技術力、ローカルサプライチェーン、都市型マーケティングまで、スシローの中国事業は急速な利益成長期に入り、その軌跡は国際的にも重要な示唆を持つ。

失敗から爆発的ヒットへ:スシローの中国市場“再理解”

2012年、スシローは合弁方式で初めて上海に進出したが、サプライチェーン構築の不足や価格戦略の不一致などが原因で静かに撤退した。2021年に再上陸したスシローは広州を起点とし、広東での10店舗、深圳での5店舗により「高コスパ回転寿司モデル」の適合性を検証した。

検証成功後、2023年から全国展開を加速し、成都・重慶・武漢を経て2024年に北京へ進出、西単大悦城では1500組待ちの記録を打ち立てた。2025年には蘇州・杭州にも進出し、年末には上海への本格復帰を果たし、華南—華東—華北の全国ネットワークを形成した。

スシローの成功は、中国市場の“再理解”にある。若年層は体験と価格価値を重視し、SNSが消費意思決定の入口となり、サプライチェーンの本土化と安全性が信頼獲得の基盤となる。

サプライチェーンの“脱日本化”:スシローの真のコスト優位

スシローの競争力は、「日本ブランド」ではなくサプライチェーンの再編成による。

中国でスシローが人気を得た背景には、2023〜2025年に高まった「質価比」需要への適合がある。50〜80元の客単価帯は外食チェーンの最激戦区であり、日本のデフレ期で磨かれた低コスト運営・安定品質・精密な価格設定がこのトレンドに合致した。

中核となったのはサプライチェーンの徹底的な“中国化”だ。食材の約90%を国内調達とし、加工・保管拠点を中国側に置くことで、全面輸入時比でコストを約50%削減した。「処理水問題」以降、中国産原料への切り替えはコスト削減だけでなく、消費者の不安を一気に払拭する効果もあった。さらにロシア産ズワイガニやカナダ産ホタテなど多様な産地を組み合わせ、品質とコスト構造を最適化し、より強固な価格競争力を形成した。

マーケティングの社会化表現:スシローは“文化現象”を作った

スシローのもう一つの強みは、中国デジタル生態系の深い理解だ。マーケティングは単なる商品訴求ではなく、「参加できる消費文化」を創り出すことにある。

スシローは三つのマーケティング回路を構築した。

第一に、ゲーム化された体験による再来店促進。「抽選スクリーン」「寿司コイン」「限定フィギュア」などにより、食事がゲーム化され、一部のコラボ玩具は二次市場で10倍以上のプレミアが付くほどで、“寿司界のディズニー”と呼ばれる。

第二に、二次元文化との深度連携。「初音ミク」「ハイキュー!!」「崩壊:スターレイル」とのコラボ店舗を展開し、若年層とSNS流量を獲得。

第三に、「首店経済」と都市マーケティング。上海では限定トートバッグ、杭州では西湖畔のポップアップなど、ユーザーが“行列してでも参加したい”文化現象を作り出した。

在華日系企業の成長軌跡:高端化、本土化、多元化

スシローの成功は特例ではない。2025年に利益成長が著しい日系企業は、美容・小売・家電・外食を問わず、高端化、本土化、多元化という三大特徴を共有する。

スシローの事例が示すのは、技術力と組織力を基盤とし、本土化でコストを抑え、マーケティングで文化的接続を生み、ガバナンスで持続力を確保するという「新しい日本モデル」である。

中国の消費構造が調整期に入り、外食が効率競争時代に突入する中、スシローの成長パターンは日系のみならず、多国籍ブランドの重要な参照点となっている。

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