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火曜日, 2026-02-24
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(年末観察)サンリオ、中国で急成長 萌え経済が示す巨大なビジネスポテンシャル

リード|この世界は、どうなってしまったのでしょうか

この一年、世界はニュースであふれていました。

市場は日々揺れ動き、政策は次々と打ち出され、技術は加速度的に進化し、資本の流れとデータの更新は止まることを知りません。

しかし、こうした喧騒のただ中で、一つの根源的な問いが、ますますくっきりと浮かび上がり、その切実さを増しています。すなわち、

この世界は、いったいどうなってしまったのでしょうか?

なぜ貨幣はこれほど潤沢なのに、人々の「豊かさの実感」は薄いままでしょうか?

なぜマクロ経済政策が続々と導入されているのに、身近な暮らしの不安は消えないのでしょうか?

なぜ技術のフロンティアは日々拡大しているのに、生活の安心感はますます揺らいでいるように感じるのでしょうか?

なぜ市場の物語は相変わらず賑やかなのに、リアルな経済のストーリーは語りにくくなっているのでしょうか?

こうした問いは、国境を越え、あらゆる階層に広がっています。

欧米でもアジア・アフリカ・ラテンアメリカでも、大国でも小国でも響き渡り、企業の決算書、家庭の選択、そして一人ひとりの人生設計にまで深く響いています。それは特定の出来事による衝撃ではなく、「かつては当然とされたルールが、一斉に機能しなくなってきた」ことによる、広範で実感を伴うギャップなのです。

その実態に迫るため、私たちはこの「年末インサイト」を始めました。

単純な答えを示すのではなく、具体的で微細な現実の現場に立ち返る決意を新たにしたからです——

企業の損益分岐点、家庭の家計簿、政策が試される場、市場の逡巡の瞬間、そしてZ世代の「過当競争」と「寝そべり(諦め)」の間で揺れる心の動き──

それら一見バラバラに見えるシグナルをつなぎ、その背後に潜む呼応し合う脈絡を探って行こう。

世界が何らかの困難に直面していると言うのならば、それは世界が突然悪くなったからではありません。むしろ、私たちが古い時代の「設計図」を手にしたまま、根本的なロジックが組み替えられてしまった時代を測ろうとしているからかもしれません。

これこそが、私たちが記録し、提示しようとしている、「今」という世界についての深い問いなのです──

この世界は、どうなってしまったのでしょうか。

(アジア財経インサイト・元音記者 8日東京)
グローバル売上高は876億円(約40億人民元)で前年同期比39.6%増、営業利益は371億円(約17億人民元)で前年同期比49.9%の大幅増――サンリオが先日発表した2026会計年度上半期(2025年3月~9月)の業績は、輝かしい決算報告を浮き彫りにしました。その背景には、中国市場の成長力が特に際立っており、サンリオのグローバルビジネスの最重要事項となっています。この成長において、中国市場は間違いなく「コアエンジン」の役割を果たしています。

中国市場の営業利益が104.8%増

決算報告によると、サンリオは2026年度上半期に中国市場で7.45億人民元(約150億円)の売上を計上し、営業利益は前年同期比104.8%増となりました。2025年9月末時点での中国市場の累計売上高は9.25億人民元(約187億円)に達し、前年同期比82%増。アジア地域全体の売上の68% を占め、2022年同期の約4倍に拡大しています。

成長の原動力は、サンリオが推進する「マルチキャラクター・マトリックス」戦略にあります。ライセンス事業が中国売上の約6割を占め、玩具・スポーツ用品、アパレル、日用雑貨など多岐にわたる消費財カテゴリーで、日常的な浸透を果たしました。マイメロディやクロミといったキャラクターの人気が持続的に高まったことで、ハローキティ一極集中の構造が緩和され、ブランドポートフォリオはより健全かつ安定したものになりました。サンリオは今や単なるキャラクターブランドではなく、豊かなキャラクター生態系を備えた「感情価値型IPユニバース」へと進化を遂げています。

ローカライズ戦略転換の成功事例


サンリオの中国での急成長は、現地化戦略の巧みな転換に支えられています。

アリババグループの阿里魚(アリフィッシュ)との強力な連携により、サンリオは中国市場のEコマースシステム、効率的なサプライチェーン、ビッグデータ分析力を直接活用できるようになりました。ブラインドボックスや限定グッズから異業種コラボ、ソーシャルメディアを活用した高頻度コンテンツ発信に至るまで、若年層の消費トレンドに迅速に対応し、IPの商業化スピードと影響力を大幅に高めました。

オフラインでは、テーマストアやポップアップストアの展開を加速し、没入型体験を通じてファンとの感情的つながりを深化させています。オンラインでは、小紅書(RED)や抖音(Douyin)などのプラットフォームで展開する「キャラクター擬人化コンテンツ」が継続的に話題を呼び、ブランドのソーシャル価値を高めています。

2025年11月末には、中国の人気ベーカリーチェーン好利来(ホーリーライ)とのクリスマス限定コラボ商品が再びソーシャルメディアで大きな反響を呼び、若年層消費者の間で一大イベントとなりました。こうしたオンラインとオフラインの有機的な連携、ローカルと国際を融合した戦略が、サンリオの中国市場における強力なコンテンツ発信力と持続的な人気の基盤となっています。

萌え系IPの商業的価値が実証される


サンリオの強力な成長は、萌え系経済の商業的可能性を改めて証明しました。
「感情的価値」はIPの最終的な参入障壁と言われる中、サンリオのキャラクターは「消費される」のではなく「共感される」存在となることに成功しました。親しみやすい設定により、ユーザーが感情を表現し、記録するためのツールとなり、結果として長期的なエンゲージメントを生み出しています。

同時に、現地ネットワークを活かすことが成長のアクセルとなりました。現地プラットフォームのサプライチェーン能力、デザインの迅速なフィードバック、データ分析力を活用することで、商品開発からマーケティング展開までの効率を最大化し、IPを中国の文化的文脈に自然に溶け込ませています。


さらに、マルチキャラクターマトリックスが事業のレジリエンスを高めることができました。多様なキャラクターを通じて、異なる年齢層やコミュニティのユーザーにアプローチすることで、事業構造の多角的な牽引を実現し、特定のキャラクターの人気変動に左右されない安定したエコシステムを築きました。
 2024年、サンリオのグローバル売上高は1323.4億円(約63.9億人民元、前年比41.7%増)、純利益は352.3億円(約17億人民元、同101.3%増)に達しました。中国市場を成長の中核に据えることで、そのグローバルな業績構造は大きく変容しつつあります。サンリオの中国での成功は、「国際的IPが中国市場で成し遂げた『再生』」と言えるでしょう。
 さらに重要なのは、この成功が示すIP経済の本質的な法則です。すなわち、感情的価値が消費の新しい原動力となり、シーン化されたコンテンツがIP拡散の経路となり、ローカル運営は必須条件となり、多IP構造こそがリスクに強い安定システムを築くということです。

【記者ノート】
勝負は「より可愛い」ではなく「より理解する」こと


中国の萌え文化、潮玩(デザイナーズトイ)文化、二次元文化が広がり続ける中、中国市場は依然として世界で最もポテンシャルの高いIP商業化の土壌と言えます。サンリオの事例は、中国ユーザーの感情構造、文化的習慣、コンテンツ嗜好を真に理解できるブランドこそが、今後の競争で優位に立てることを示しています。

サンリオにとって中国市場は、単なる成長のエンジンであるだけでなく、未来の戦略的イノベーションを試す実験場でもあるのです。

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