アジアのシルバーエコノミー 日本企業が中国市場に照準

(KELLY、東京)

2026年6月26日、瀋陽国際展覧センターで、2026東北アジア国際シルバー経済協力交流活動が開幕した。テーマは「シルバーに境界なし、資源を結び、産業の力で振興を促す」。中国、日本、韓国、ロシア、モンゴル、フランス、シンガポールなどから400社を超える国内外の有力企業が出展し、日本貿易振興機構(JETRO)が組織した日本企業団も高い存在感を示した。

これは孤立した動きではない。

7月6日には、パナソニックと中国企業の北京零度元啓、北京安馨康養が三者戦略提携協定に署名し、「長寿医学+健康コミュニティ」の産業モデルづくりに乗り出した。

同じ時期、介護用品レンタルを手がけるヤマシタ(YAMASHITA)は、中国最大規模の介護・福祉展「CHINA AID 2026」に参加し、12社の日本の介護関連企業とともに出展した。会期中には、フランチャイズ関連の商談が約100件に達した。

さらに先行する布石として、ヤマシタと卸売会社Welfanが中国で高齢者用品店を増やし、2030年前後までに直営店と加盟店を合わせて100店舗規模を目指す計画も、今年8月に明らかになった。

瀋陽から上海へ、サプライチェーン博覧会からCHINA AIDへ、パナソニックからヤマシタへ。日本企業は、中国のシルバーエコノミーへの取り組みを加速させている。これは散発的な市場調査ではなく、計画的な産業展開である。

ヤマシタとWelfan 100店舗構想の狙い

2026年8月、日本経済新聞は、介護用品レンタルを展開するヤマシタと、卸売事業を手がけるWelfanが、中国で高齢者用品店を増やす計画を報じた。両社は2030年前後までに、直営店と加盟店を合わせて100店舗規模に広げることを目指している。

ヤマシタは2012年から中国で高齢者向け事業を展開してきた。2025年にはWelfanと共同で、山下為楽帆(上海)実業発展有限公司を設立。2026年4月には江蘇省無錫市に新会社「山下福至(無錫)健康管理有限公司」を設けた。同年7月には、中国最大の介護・福祉展「CHINA AID 2026」に参加し、会期中の加盟店関連商談は約100件に上った。

ヤマシタとWelfanが見据えるのは、中国の巨大な高齢者人口である。60歳以上の人口はすでに3億2300万人を超える。両社は「山月輪秋」ブランドで高齢者用品店を展開し、現在は成都旗艦店を含め、中国国内に6店舗を構える。中国の長期介護保険制度が全面的に広がる流れに合わせ、全国規模の販売ネットワークを築く計画だ。

パナソニック 製品販売からソリューション提供へ

パナソニックは、中国で最も深く事業を展開してきた日本企業の一つだ。中国市場で48年にわたって事業を続けてきた同社は、いま製品販売からシステムソリューションの提供へと軸足を移している。

2026年4月1日、パナソニックグループは新たな事業体制を正式に始動した。6月には、中国国際サプライチェーン促進博覧会に3年連続で「シルバーエコノミー」をテーマに出展し、中国で展開する「Wellness Smart(WS、智感健康)」事業を紹介した。この事業は、日本で長年蓄積してきた高齢者ケアの実践経験と、中国の充実したサプライチェーンを組み合わせるものだ。

パナソニック ホールディングス中国・北東アジア総代表の中山正春氏は、中国はすでに本格的な高齢化社会に入り、シルバー経済の市場規模は8兆元を超えていると指摘した。シルバー経済の発展は第15次5カ年計画における国家戦略にも組み込まれており、パナソニックは中国の第15次5カ年計画を踏まえ、中国市場向けの成長戦略を策定しているという。

2026年7月6日、パナソニックは北京零度元啓、北京安馨康養と三者戦略提携協定を締結し、「長寿医学+健康コミュニティ」の産業モデルを共同で構築することで合意した。三者は、長寿医学研究、包括的なウェルネス運営、WST(Wellness Smart Town)智感健康生活ソリューションの三つの強みを組み合わせ、「国際健康コミュニティ+長寿ライフスタイル医学」と「ウェルネス滞在型コミュニティ+長寿ライフスタイル医学」という新たな発展モデルを探る。パナソニックが日本の藤沢と大阪で進めてきた全世代共生型SSTコミュニティの計画・運営経験は、中国事業にとって実践的な参考材料となっている。

北東アジア・シルバー産業協同圏 地域連携のプラットフォーム

瀋陽でのイベント期間中、より制度的な意味を持つ協力も実現した。

遼寧省養老サービス業連合会が主導し、黒龍江、吉林、内モンゴルの関係団体に加え、日本と韓国の高齢者ケア関連団体も参加して、「北東アジア・シルバー産業協同圏」が設立された。山西省や天津市などの協会もこれに積極的に加わった。同協同圏は、政策対話と産業マッチングの橋渡し役となり、高齢者ケア標準の相互承認、技術資源の共有、人材の共同育成を進め、国境を越えた高齢者ケア産業の連携発展を促すことを目的としている。

東北北東アジア・シルバー産業協同圏の設立は、日本企業の中国シルバーエコノミーへの取り組みが「単独展開」から「地域連携」へ移りつつあることを示している。これは日本企業が中国市場に入るためのより円滑なルートを提供するだけでなく、日中間の高齢者ケア標準の相互承認と接続に向けた制度的な枠組みをつくるものでもある。

課題と不確実性

日本企業が中国のシルバーエコノミーに本腰を入れるうえで、課題も少なくない。2000年代初め、日本の介護施設運営企業は中国市場に進出したが、サービスの現地化が十分に進まず、多くのプロジェクトは期待通りの成果を上げられなかった。文化の違い、消費習慣、政策実装のスピードは、いずれも日本企業が越えなければならないハードルである。高級路線と普及型ニーズとの間にある緊張関係も、ヤマシタの「100店舗」構想が本当に根付くかどうかを左右する。

中国市場が求めているのは、「日本製」の高齢者用品だけではない。必要なのは、中国の現場で使えるソリューションである。日本企業による中国シルバーエコノミーへの取り組みが成功するかどうかは、「日本の経験」と「中国の需要」の間に、どれだけ精密な接点を見いだせるかにかかっている。

瀋陽の北東アジア国際シルバー経済協力交流活動から「北東アジア・シルバー産業協同圏」の設立へ、パナソニックの「Wellness Smart」ソリューション提供からヤマシタの「100店舗」構想へ。日本企業は、中国のシルバーエコノミーという兆元規模の市場で布石を急いでいる。彼らが持ち込むのは、製品や資金だけではない。高齢化社会の中で日本が蓄積してきた制度経験とサービス理念でもある。

日本企業が中国のシルバーエコノミーに向かうのは、商業上の選択であると同時に、時代の必然でもある。中国のシルバー経済市場が7兆元から25兆元へと拡大し、長期介護保険が試行段階から全面普及へ進むなか、日本企業が30年以上にわたって積み上げてきた経験と能力は、この市場で新たな足場を探している。

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