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土曜日, 2025-08-02
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なぜ日本には『ウルトラマン』や梁文鋒(リャン・ウェンフォン)がいないのか?

アメリカの『タイム』誌は最近、「2025年 世界で最も影響力のある100人」を発表しました。トランプ、ヴァンス、マスクなどの名前に加え、アジア出身の顔ぶれも十数名リスト入りしています。

日本からは、俳優の真田広之、ロックバンドX JAPANのメンバー・YOSHIKI(林佳樹)、アーティストの奈良美智の3名が選ばれました。韓国からは野党指導者の李在明と芸能人のパク・チェヨンの2名。そして中国からは、DeepSeekの創業者・梁文鋒、建築家の馬岩松、香港証券取引所CEOの陳翊庭などが選出されました。また、アメリカ在住のアジア系著名人として、AMDのCEOであるリサ・スー(蘇姿豊)や、映画監督のジョン・M・チュウ(朱浩偉)、俳優のダニエル・デイ・キム(金大賢)なども含まれています。

中でも注目を集めたのは、AIの大規模言語モデルの分野で急成長を遂げ、トップクラスの地位に躍り出た梁文鋒氏です。これまでAI開発の分野ではアメリカが圧倒的なリードを保っていましたが、梁文鋒氏はその構図を変えつつあります。『タイム』誌は、彼の会社DeepSeekについて「より効率的なデータ処理により、OpenAIのChatGPTに匹敵する性能を持ちながら、使用したNVIDIA製の最先端チップはわずかだった」と評価しました。

2024年2月には、DeepSeekがアメリカのApple App StoreにおいてChatGPTを抜き、無料アプリのランキングで1位を獲得しました。梁文鋒氏はまた、中国の首相・李強氏や国家主席・習近平氏との座談会にも招かれ、中国のテック界の重鎮となっています。

こうした現象に対して、日本のネットユーザーの中には「なぜ日本には“ウルトラマン”や梁文鋒がいないのか?」と疑問を投げかける声も出ています。ここでの「ウルトラマン」とは、怪獣を倒す特撮ヒーローのことではなく、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏のことを指しています。

世界のAI発展の大局において、日本の歩みは、伝統的な工業・科学技術大国が新たな技術革命にどう対応しているかを映し出しています。中米がAI開発競争を繰り広げる中で、日本は観客でいることを良しとせず、かといって中米のモデルを効果的に模倣することも難しい状況です。

全体的に見ると、日本のAI技術は世界で第2グループに位置しています。ロボティクスやコンピュータビジョンなどでは先行していますが、ディープラーニングや大規模言語モデルといった最先端の分野では遅れを取っています。アメリカのシリコンバレーや中国の杭州・深圳と比べると、日本には活気あるスタートアップ・エコシステムが不足しています。

中国でDeepSeekのような企業が生まれる最大の要因は2つあります。1つは、テンセントやアリババといった大型IT企業が多数存在し、AIの開発と応用のための充実したエコシステムが整っていること。もう1つは、大学によるAI人材育成の尽力です。この点において、日本は中国に大きく後れを取っています。

たとえば、AI分野におけるトップレベルの論文発表者数を基準に見た場合、世界トップ10機関は中米の大学・企業によって占められています。アメリカからはGoogle、スタンフォード大学、MIT、カーネギーメロン大学、Microsoft、Metaの6機関、中国からは清華大学、北京大学、浙江大学、上海交通大学の4校がランクインしています。

さらに、中国の大学は急速な成長を見せています。梁文鋒氏の母校である浙江大学は、2020年には世界第89位でしたが、2024年には第6位に躍進。上海交通大学も第40位から第9位に上昇しました。一方、日本で最も高いランクの研究機関である理化学研究所は第44位から第64位に、東京大学は第50位から第71位に後退しました。

とはいえ、日本はAI技術全体では中米に後れを取っているものの、実用性や信頼性を重視する姿勢があり、「実装志向」の特色を持っています。たとえば、ファナックはAIを搬送用ロボットや画像認識ロボットに応用し、東芝はAIを用いた診断支援システムを開発しています。こうした動きは、日本の「技術立国」としての伝統を反映しています。

今回の『タイム』誌「世界で最も影響力のある100人」において、日韓からは主に芸能人が名を連ねたのに対し、梁文鋒氏の選出は、中国が近年、科学技術・経済分野において継続的にブレイクスルーを図ってきたことの一つの象徴とも言えます。

かつては、「経営の神様」松下幸之助や「ソニーの父」盛田昭夫が『タイム』の表紙を飾り、日本の経済成長を象徴する人物として取り上げられていました。しかし近年では、ソフトバンクの孫正義を除き、文芸やスポーツ分野の人物が主な注目対象となっています。

一方、中国では、梁文鋒氏以前にも、華為の任正非、小米の雷軍、CATLの曾毓群、テンセントの馬化騰、アリババの馬雲などが『タイム』の100人に選ばれてきました。彼らはいずれも、その分野で技術革新や業態変革をリードし、新たなトレンドを切り開きました。これは中日両国の経済・技術力の変遷を映し出す、ある種の“特別な窓”となっているのです。

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