34年ぶりに、日本は世界最大の対外純資産国の地位を失いました。日本財務省が5月27日に発表した最新データによると、2024年末時点での日本の対外純資産残高は前年比12.9%増の533兆5000億円となり、6年連続で過去最高を更新しましたが、ドイツの569兆7000億円に抜かれました。この変化は、世界経済の構造的転換を示すものであり、為替変動、貿易競争力、産業構造の最適化などの面で日本経済が直面する課題を浮き彫りにしています。

円安の“両刃の剣”効果が顕在化
円安は日本の海外資産の円換算価値を大きく押し上げましたが、それは同時に日本経済の相対的な弱さを反映しています。データによると、2024年において米ドルとユーロは対円でそれぞれ11.7%、5%上昇し、日本の対外資産総額は1659兆円、対外負債は1126兆円、純資産は12.9%増となりました。円安は海外資産の価値を押し上げた一方で、国内企業の負債コストを増加させ、経済全体の競争力を低下させる結果となっています。
ドイツの貿易優位が「勝因」
ドイツの台頭は、その強力な貿易実績と密接に関係しています。2024年、ドイツの経常収支黒字は2487億ユーロに達し、高付加価値製造業の輸出競争力がその原動力です。これに対し、日本の2024年の貿易黒字は29兆4000億円(約1800億ユーロ)にとどまり、競争力の差がさらに拡大しました。ドイツは自動車、機械など高品質な製品で世界市場を拡大し続け、多くの海外資産を蓄積しています。一方、日本は産業の高度化の遅れや貿易構造の単一性により、対外純資産国としての地位を徐々に失いつつあります。
日本経済に多重の圧力
外的な競争の激化に加え、日本国内の経済も苦境にあります。5月16日に発表された速報値によれば、2025年第一四半期の実質GDPは前期比で0.2%減、年率換算で0.7%減となり、1年ぶりにマイナス成長となりました。一方で、日本企業は海外M\&Aに積極的で、特に米国と英国の金融、保険、小売分野への投資が増えていますが、国内産業の空洞化リスクが高まり、対外純資産の基盤を一層弱めています。
今後の課題と打開策
専門家は、日本が再び世界最大の対外純資産国の地位を取り戻すためには、以下の取り組みが必要だと指摘しています。第一に、構造改革を通じて国内経済を活性化し、内需の底上げを図ること。第二に、産業構造を最適化し、高付加価値製造業やデジタル経済分野への投資を拡大すること。第三に、貿易の多角化戦略を推進し、特定市場への依存を減らすことです。さらに、為替の安定や債務規模の管理も重要な経済政策課題です。
グローバル経済の再編が加速する中、日本が今回、世界最大の対外純資産国の地位を失ったことは、その経済の現状に対する警鐘であり、今後の改革の方向性を示すものでもあります。




