米中間で最近合意された一時的な「関税休戦」協定は、長引く貿易摩擦を一定程度緩和するものであり、欧州連合(EU)はこの動きを歓迎し、国際貿易環境の安定化に寄与すると評価している。
しかし、欧州委員会の貿易担当委員 ヴァルディス・ドンブロフスキス(Valdis Dombrovskis) 氏は、状況がやや改善したとはいえ、2024年のEU経済成長については依然として慎重、かつ悲観的な見通しを持っていると述べた。

米中の関税緩和に対するEUの評価は慎重ながらも前向き
ドンブロフスキス氏は、米中双方が交渉を通じて一部の関税を引き下げる意向を示したことについて、「正しい方向への一歩」だと評価。これにより、中国の輸出先が変化し、EU産業にさらなる打撃を与えるとの懸念が多少和らいだという。
ただし、同氏は同時に、「米国の対中関税は依然として高く、貿易障壁が完全に取り除かれたわけではない」と指摘。したがって、国際貿易の不確実性は根本的には解消されていないという認識を示した。
内部的な経済課題は深刻 回復の勢いに欠けるEU
国際貿易環境に若干の改善が見られる一方で、EU内部の経済的課題は依然として重くのしかかっている。
ドンブロフスキス氏は、インフレ圧力が完全には払拭されておらず、エネルギー価格の変動も続いていること、さらには地政学的リスクの高まりなど、複数の要因がEU経済の早期回復を阻んでいると指摘。
欧州委員会は2024年通年の経済成長見通しについて慎重な姿勢を維持しており、予想を下回る結果となる可能性も否定していない。