コンテナ航運データ機関であるCTS(コンテナ・トレード・スタティスティクス)の最新統計によると、2025年の世界全体のコンテナ輸送量は1億9290万TEUに達した。2024年の1億8430万TEUから4.7%増加し、過去最高を更新。年間で計8カ月も月間輸送量が1600万TEUの大台を突破し、特に3月、5月、8月、12月にはそれぞれ月間ピークを塗り替えた。

貨物量が増え続ける中で、世界のコンテナ市場は表面上、旺盛な需要を示している。しかし注目すべきは、過去最大の輸送規模が運賃の上昇に繋がっていない点だ。2025年末の全体的な運賃水準は、前年比で20%近く下落した。CTSは、長年需給関係が主導してきた価格形成メカニズムに構造的な変化が起きており、貨物量の増加と運賃上昇の正の相関が弱まっていると指摘している。
フレイトス(Freightos)のアナリスト、ジュダ・レヴィンは、世界の輸送需要は拡大しているものの、海運会社の収益はそれに見合う支えを得られておらず、業界が新たなサイクルに入った可能性があると考えている。また、市場の不確実性は依然として大きい。2026年の需要も引き続き伸びると予測されているが、最大手のマースク(Maersk)などの業績予想は「黒字」から「10億ドルの赤字」まで幅がある。核心となる変数は、紅海(こうかい)ルートの正常化だ。迂回航行が続くようであれば、コスト構造と運力の配置に影響を与え続けることになる。
地域別の構図を見ると、東アジアが依然として世界の輸出センターとしての地位を固めている。2025年、東アジア地区のコンテナ輸出量は前年比で約700万TEU増加し、世界全体の伸びに大きく貢献した。世界経済の不確実性が高まる中で懸念されていた、環太平洋貿易の大幅な減速を打ち消す形となった。
貿易構造の変化では、アジア域内貿易が2025年に最大の航路セグメントとなり、前年比5%増を記録した。その輸送規模は第2位の「東アジア-北米」航路の2倍以上に達しており、域内サプライチェーンの一体化が進んでいることを示している。同時に、欧州の輸入需要も東アジアからの貨物に支えられて9%増と力強く伸び、単月の荷役量が180万TEUに達するなど、欧州市場のアジア製品への依存が続いている。
対照的に、主要地域の中で唯一輸入が減少したのが北米で、年間で前年比2%減となった。東アジアからの輸出減に加え、欧州からの輸出も停滞。消費構造の変化、在庫サイクルの調整、そして貿易政策の不確実性が北米の輸入を抑制する要因となった。
世界の貨物量が過去最高を記録する中、港湾の運営能力がサプライチェーン安定の鍵を握っている。2025年の世界港湾ランキングでは、以下のトップ5が依然として圧倒的な影響力を持っている。
1位は上海(シャンハイ)港。世界最大のコンテナ港として長年首位を維持し、年間取扱量は4000万TEUを超える。長江デルタの製造業地帯を背後に持ち、川と海を繋ぐ物流体系によってそのハブとしての地位は揺るぎない。
2位はシンガポール港。優れた地理的条件と高度なトランシップ(積み替え)機能を備え、東西の主要航路を結ぶ最重要拠点だ。自動化ターミナルとデジタル化された配船能力により、過密な寄港スケジュールでも高い効率を維持している。
3位は寧波(ニンポー)舟山(しゅうさん)港。中国東部の産業クラスターに隣接し、近年はコンテナだけでなくバルク貨物(バラ積み貨物)でも成長。世界有数の総合的な処理能力を持ち、重要な輸出ルートとなっている。
4位は深圳(シンセン)港。広東・香港・マカオグレーターベイエリアの中核港湾群として、電子機器や高付加価値製品の輸出に強みを持ち、世界中の主要経済圏と航路を結んでいる。
5位は青島(チンタオ)港。山東(さんとう)半島の製造業と後背地の物流システムに支えられ、北東アジアの航運ネットワークにおいて重要な位置を占めている。特にスマート港湾や自動化ターミナルの建設において世界をリードしている。
注目すべきは、世界トップ5のコンテナ港のほとんどが東アジアに集中している点だ。これは2025年の東アジア輸出の力強い伸びを裏付けている。港湾インフラ能力の継続的な向上は、紅海の迂回航行や地政学的衝突、航路の再編といった衝撃を一定程度吸収し、激動の環境下でも世界の物流チェーンを支える基盤となった。




