「中国+1」の勝者|パキスタン:自ら立ち上がる

(元音・東京発)

2026年は中国とパキスタンの国交樹立75周年に当たり、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)が始動して13年目でもある。この節目に、パキスタンのシャバズ・シャリフ首相は5月24日、杭州で開かれた第3回中国・パキスタン情報技術・通信・バッテリーエネルギー貯蔵産業B2B投資サミットで、明確な目標を掲げた。パキスタンを南アジアの「小さな中国」にするというものだ。

シャリフ首相は演説で、中国の発展経験を参考に経済転換を実現したいとの期待を示し、その構想を「小さな中国」と表現した。サミット期間中、両国企業は総額12億2,000万ドルの協力協定に署名した。

5月のシャリフ首相による訪中は、中国・パキスタン経済回廊のアップグレード版「CPEC 2.0」の始動にもつながった。パキスタンの「中国+1」の物語は、インフラから産業へ、外部からの「輸血」から自ら成長力を生む「造血」へと移りつつある。

ほかの「中国+1」の勝者と比べたパキスタンの特徴は、単に生産能力を受け入れるのではなく、インフラから産業へ、外部からの輸血から自立的な成長力の創出へと進む体系的な再構築である点だ。これはより深い段階の飛躍である。低付加価値から高付加価値への飛躍ではなく、「支援される側」から「自ら立ち上がる側」への飛躍だ。

1.0から2.0への飛躍

中国・パキスタン経済回廊は、共同建設を進める「一帯一路」の旗艦事業である。

在パキスタン中国大使館が2026年4月に公表した説明によると、CPECはこれまでにパキスタンへ259億3,000万ドルの直接投資を呼び込み、26万1,000人分の安定した雇用を直接創出した。新たに整備された発電設備の容量は8,000メガワットを超える。グワダル港自由区へ進出する企業も大幅に増え、かつての漁村は地域のハブへと変貌しつつある。

しかし、本当に注目すべき変化は数字そのものではなく、その背後にある「アップグレードの論理」である。

中国・パキスタン経済回廊は「1.0」から「2.0」へ移行している。1.0が解消したのは、電力、道路、港湾の不足というインフラ上のボトルネックだった。これに対し、2.0の課題はさらに奥深い。インフラによる「ハード面の接続」から、産業、農業、鉱業、情報技術、職業訓練など、より深い分野へ協力を広げることである。両国は成長、民生、イノベーション、グリーン、開放という「五つの回廊」を整備し、産業、農業、鉱業を三つの重点分野とする方針を打ち出した。パキスタンのアフサン・イクバル計画・開発・特別事業相は、回廊の次段階では経済特区と輸出志向型製造業を優先し、情報技術、再生可能エネルギー、農業などの二国間協力を強化すると明言している。

より具体的な変化は、経済特区の配置に表れている。CPEC第2期の産業協力が進むなか、パキスタン全体で認可された経済特区は7カ所から44カ所へ大幅に増え、新たに37カ所が加わった。一方、中国とパキスタンが以前にCPECの枠組みで重点特区として定めたのは9カ所である。パキスタンは「回廊国家」から「産業受け入れ国」へと変わりつつある。

同時に、医療・ヘルスケア産業がCPEC 2.0の新たな成長分野となっている。2026年7月17、18日には、パキスタン・中国医薬健康B2B投資サミットがイスラマバードで開かれた。期間中、両国企業は総額6億2,950万ドルに上る22件の商業契約に署名したほか、潜在的な協力額が約8億ドルに達する84件の覚書を交わした。大きな投資余地を持つパキスタンの医療・ヘルスケア産業は、CPEC「2.0アップグレード版」の質の高い発展を支える新たな方向となっている。

「全天候型」の相互信頼と実行力

「中国+1」の構図におけるパキスタンの位置づけは、決して経済的な意味だけにとどまらない。

中国とパキスタンの関係には、「全天候型戦略的協力パートナーシップ」という独特の呼称がある。これは、パキスタン国内の政治サイクルの変化や国際的な地政学構造の変動を超える関係であることを意味する。中国全国人民代表大会常務委員会の蔡達峰副委員長は、国交樹立75周年の記念レセプションで、両国の友好は「揺るぎないパートナーシップ」を基礎とし、75年にわたり相互信頼、確固たる支持、共同発展の模範であり続けてきたと述べた。中国は12年連続でパキスタン最大の貿易相手国となっている。両国政府が長年強調してきた相互尊重と内政不干渉も、政治的相互信頼を支える重要な基盤の一つである。

この「全天候型」という基調は、具体的なビジネス協力でも裏づけられている。ハリル・ハシュミ駐中国パキスタン大使は2026年5月、過去2年間に両国が300件を超える覚書と30件を超える合弁協定を締結し、総額は130億ドルを超えたと明らかにした。覚書の約30%は正式な契約へ移行している。

農業分野でも動きが加速している。2026年1月19日、パキスタン・中国農業投資大会がイスラマバードで開催された。両国企業は79件の覚書を締結し、推定投資額は約45億ドルに上った。協力範囲は食品加工、畜産、漁業、農業機械・設備など10のサブセクターに及ぶ。

パキスタンはバッテリーエネルギー貯蔵と先進電池産業の発展も加速させ、戦略的な製造・輸出拠点を徐々に形成している。とりわけ、中国・パキスタン経済回廊を活用して南アジア、中東、アフリカ、中央アジア市場への接続を目指す中国企業にとって、その意味は大きい。

これらの協力を貫く基調は、「全天候型」の相互信頼を商業契約へ転換する力にある。協定は単なる合意文書ではなく、実行でき、事業化でき、持続可能なものである。

模倣できない戦略的奥行き

ASEANの5カ国や中央アジア諸国と比べると、パキスタンの「中国+1」には独自性がある。

ベトナムは「量」、マレーシアは「技術」、タイは「転換」、インドネシアは「戦略」、カンボジアは「後発性」、カザフスタンは「ハブ」、キルギスは「回廊」で勝つ。これに対し、パキスタンの強みは「戦略的奥行き」にある。

それは単なる生産能力の受け入れではなく、インフラから産業へ、輸血から造血へと進む体系的な再構築である。259億3,000万ドルの投資、44カ所の経済特区、26万1,000人分の雇用。これらの数字の背後には、「中国+1」を通じて経済構造の転換を成し遂げようとする一国の長期的な取り組みがある。

シャリフ首相が述べたように、パキスタンが求めているのは「専門知識、投資、産業協力であり、援助や施しではない」。

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