「中国プラスワン」の勝者|ウズベキスタン:中央アジア内陸部に生まれる新たな製造拠点
(ロヤ・東京)
中国税関当局の統計によれば、2025年の中国・ウズベキスタン間の貿易額は約161億ドルに達した。2026年第1四半期にはさらに41億900万ドルへ拡大し、前年同期比35.5%増となった。ウズベキスタン国家統計委員会のデータでも、2026年1~5月の対中貿易額はすでに77億ドルに上っている。中央アジアで最も人口が多く、人口が3,800万人を超えるこの国で、「中国プラスワン」の具体化が加速している。
2026年7月1日時点で、ウズベキスタンに進出する外資系企業の数は初めて2万社を突破した。そのうち中国資本が関与する企業は6,060社に上り、国別では首位で、外資系企業全体の3割近くを占める。製造業、情報技術、新エネルギー分野への投資が加速するなか、ウズベキスタンは「通過回廊」から「製造拠点」へと姿を変えつつある。
BYD:年産5万台、中央アジア初の完成車工場
2026年7月8日、BYDの中央アジア・コーカサス地域責任者は、ウズベキスタン投資・産業・貿易相と会談し、新エネルギー車分野での協力をさらに深めることで複数の合意に達した。会談の中心議題は、ジザク州にあるBYDの工場だった。中央アジアの内陸部に位置する、同社初の新エネルギー車完成車製造拠点である。

この工場は2024年夏に稼働を開始した。生産方式はCKD組み立てで、最初に量産された車種は「宋PLUS DM-i チャンピオン版エディション」と「駆逐艦05 チャンピオン版エディション」だった。第1期の設計上の年産能力は5万台で、製品はウズベキスタン国内市場に供給されるほか、将来的には中央アジアの他市場への輸出も計画されている。BYDがウズベキスタン市場に参入したのは2023年。そのわずか1年後には工場が稼働した。2024年1月25日にはミルジヨエフ大統領がオンラインで生産開始式に出席し、初号車のラインオフを見届けた。
次の段階として、BYDはウズベキスタン政府と、生産能力の拡大、現地化率の引き上げ、全国規模の急速充電ネットワークの整備などについて協議を進めている。車を売る段階から、車を造る段階へ。さらに充電インフラを築く段階へ。ウズベキスタンにおけるBYDの布陣は、点から面へと広がり始めている。
江淮汽車:1億3,500万ドルのタシケント工場
2026年5月、江淮汽車(JAC Motors)とタシケント投資会社の合弁による江淮汽車タシケント工場が、ヤンギ・アヴロド(Yangi Avlod)工業団地で正式に開業した。プロジェクトの総投資額は1億3,500万ドル。第1段階では年産1万台のSKD工場が稼働し、第2段階ではCKDの全工程に対応する工場を建設し、生産能力を3万台へ引き上げる計画だ。事業範囲は完成車の組み立て、販売、アフターサービスに及ぶ。ウズベキスタン側は、この事業を「現代的な自動車産業の発展と、中国・ウズベキスタン間の産業協力拡大における重要な段階」と位置付けている。
BYDはジザクに、江淮汽車はタシケントに拠点を置く。二つの動きが示しているのは、ウズベキスタンが「自動車輸入国」から「自動車生産国」へと移行しつつあるということだ。
華電の太陽光発電:中央アジア最大級の単体新エネルギー案件
2026年5月、中国華電によるウズベキスタン・ジザク500MW太陽光発電プロジェクトが、全容量で商業運転に入った。これは中国華電が海外で投資・建設した最大の単体新エネルギープロジェクトである。
同プロジェクトは華電海外投資と中国電装が共同で投資し、2期に分けて進められた。第1期の300MWは2026年3月31日に商業運転へ移行し、第2期もその後、全容量で系統接続を完了した。稼働後の年間平均発電量は約11億キロワット時に達し、約40万世帯分の電力需要を満たすことができる見込みだ。年間で標準炭32万8,400トンを節約し、二酸化炭素排出量を89万3,800トン削減する効果も見込まれている。中国・ウズベキスタンによる「一帯一路」の質の高い共同建設とグリーンエネルギー協力を象徴する事業として、中央アジアにおける大型太陽光発電所の建設スピード記録も更新した。
中国能建の蓄電:400MW/800MWhのプロジェクト群
2026年5月、中国能源建設集団(Energy China)が投資・建設するウズベキスタン第3期蓄電プロジェクト群で、タシケント州のアケン、ナマンガン州のオビ、ナマンガン州のチズ、アンディジャン州のガタンの4カ所の蓄電発電所が、すべて逆送電を完了した。総規模は400MW/800MWhに及ぶ。
4案件はいずれもリン酸鉄リチウム電池を用いた電気化学式蓄電システムで、それぞれ100MW/200MWhの蓄電設備を備え、同時に220kV昇圧変電所も建設される。プロジェクトは現在、全容量での系統接続に向けた最終段階に入っている。
華電の太陽光発電が「電気をつくる」役割を担うなら、中国能建の蓄電は「電気をためる」役割を担う。両者が組み合わさることで、ウズベキスタンのエネルギーシステムは「電力を確保する」段階から、「電力をより賢く使う」段階へ進みつつある。
新ナマンガンIT Park:1億1,700万ドル計画の第1号案件
2026年6月23日、ミルジヨエフ大統領は新ナマンガンIT Parkの起工式に自ら出席した。
同プロジェクトの敷地面積は約1.7ヘクタール。教育・研修、ITサービス輸出、オフィススペース、国際企業向けサービスを一体化した17階建ての近代的なビルを建設する計画だ。これは総額1億1,700万ドルに上る大型計画の一部であり、ウズベキスタンは中国側パートナーと共同で、国内6地域にIT産業パークを整備する。ナマンガンはその最初の実施案件となる。完成後は約2,000人の若者の雇用を創出する見通しだ。
「製造」から「デジタル」へ。ウズベキスタンにおける「中国プラスワン」は、次の層へと入りつつある。
タシケントの都市更新:35億ドル規模の合意が具体化
2026年5月、第3回中国・ウズベキスタン地方協力フォーラムの期間中、タシケント市政府は複数の中国企業と総額35億ドルを超える協定を締結した。対象は、BRT(バス高速輸送)と道路インフラに10億ドル、交通・社会インフラの共同投資プロジェクトに10億ドル、排水・灌漑・雨水処理システムに4億ドル、都市更新区域における高層住宅建設に5億ドルなど、多岐にわたる。
同じ時期に、中材節能はナヴォイ空気分離装置のEPC総請負契約を締結した。西普集団のサマルカンド2,500トン/日クリンカー生産ラインも正式に稼働した。さらに、中国華栄紙業はサマルカンド州に5億ドルを投じて製紙工場を建設する計画で、3,000人の雇用を生み出す見込みである。
越境人民元融資:7億元の金融面での突破
2026年7月、中国銀行とアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、ウズベキスタンの通信分野を対象とする5年物の越境人民元融資プロジェクトを実行した。融資総額は7億元を超え、融資の全工程で人民元決済が採用された。これは、中国系銀行とAIIBがウズベキスタンの通信分野で実現した代表的な協力案件の一つであり、中央アジアにおける越境人民元決済の活用場面をさらに広げるものとなる。
BYDの年産5万台の完成車工場から、江淮汽車の1億3,500万ドル規模の工場へ。華電の500MW太陽光発電から、中国能建の400MW/800MWh蓄電プロジェクトへ。1億1,700万ドルのIT産業パークから、35億ドル規模のタシケント都市更新へ。これらの案件を一つにつなげて見ると、そこには一つの変化が浮かび上がる。
ウズベキスタンは「資源国」から「製造国」へ、「通過回廊」から「産業拠点」へと変わりつつある。同国が受け入れているのは、中国からの投資だけではない。産業高度化の能力と、その実現に向けた道筋そのものなのである。



