(アジア財経インサイト記者 九日/東京 11月28日)
日本政府は11月21日に公表した経済政策の中で、2035年までに国内の造船量を2024年比で倍増させる目標を掲げました。当政策を後押しするため、政府は今後10年間の産業基金を設立し、官民合わせて総額1兆円を投入して造船業の再生を支援。これに呼応し、日本郵船、商船三井、川崎汽船の三大海運会社は先日、次世代船舶の開発分野において造船企業と深い連携を行う意向を表明しました。

大手海運3社は、今治造船と三菱重工業が共同出資で設立した船舶設計会社MILES(マイルズ)への出資を計画しており、将来的には国内企業への優先発注も視野に入れています。海運業と造船業の資本・事業連携は、日本が次世代船舶サプライチェーンで抱える課題を克服し、長年苦境にあった国内造船業復権の基盤を築くものと見られています。
日本の海運会社と造船会社が資本レベルで共通の船舶開発体制を構築するのは今回が初めてです。大手海運3社は、今治造船が保有するMILES株式の一部を取得する予定で、出資比率は均等になる見通しです。現在のMILESの株主構成は三菱重工51%、今治造船49%となっています。
これに先立ち、大手海運3社、及び三菱重工傘下の三菱造船、今治造船、ジャパン マリンユナイテッド(JMU)、そして今治造船とJMUが共同出資する日本シップヤード(NSY)の計7社は、液化二酸化炭素(LCO₂)運搬船の開発で既に協力関係を構築していました。今回のMILESへの正式出資により、同分野の商業化プロセスがさらに加速することが期待されます。
今回の資本連携は、MILESを日本における船舶設計の「共通プラットフォーム」として確立する契機と位置付けられています。将来的には、海運3社のニーズを反映した次世代船舶の共同設計だけでなく、より幅広い船型での共同研究開発へと展開する見込みです。設計の標準化と汎用性向上を通じて、MILESの設計成果を複数の国内造船所に提供することで、規模の経済(スケールメリット)を追求し、日本造船業全体の競争力向上を目指しています。
従来の造船モデルでは、船主の個別要望に応じたオーダーメイド設計が一般的で、造船企業の生産効率向上が困難でした。プラットフォーム化・共通化された設計体制を推進することで、業界は高度な「過剰カスタマイズ」がもたらす生産性の制約から脱却できると期待されています。
同時に、日本の海運会社とその他の国内造船所との関係強化も進みそうです。日本郵船はMILESへの出資に加え、液化二酸化炭素運搬船の国内調達を検討。また、長年建造実績のなかったLNG(液化天然ガス)運搬船の国内再建造の可能性も探っています。同社は2028年度までにLNG運搬船隊を約4割増の130隻規模に拡大する計画で、現在の発注先は中国・韓国が中心ですが、今後はより多くの受注を国内に残す意向を示しています。
政策の追い風を受け、海運業界からも「政府支援を機に産業再起を加速すべき」との声が相次いでいます。造船業は、日本の経済安全保障だけでなく、製造業復興を掲げる米新政権との協力においても重要な分野です。過去には利害調整が難しかった海運業界も、今回は造船所と連携し、「オールジャパン体制」で産業再生に乗り出す構えです。
1970〜80年代、日本は一時世界造船市場シェアの約50%を占めていました。しかし、韓国・中国企業との競争で次第に劣勢となり、2024年にはシェアが約10%まで落ち込んでいます。業界内では、設計の共通化・標準化を早期に推進できなかったことが効率低下と競争力喪失の一因と広く認識されています。対照的に中国造船業は、設計資源を上海船舶研究設計院(SDARI)に集中させる高度な集約化を実現し、生産効率を飛躍的に向上させています。




