東アジアの科学技術R&Dが世界の頂点へ、中国が初めて米国を上回る

(李達・東京報道)

8月7日、日本の文部科学省傘下の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は『科学技術指標2026』を公表した。約160項目の指標を収録した年次報告書で、主要データは2024年時点のものだが、その結果は世界の科学技術をめぐる大きな転換を浮き彫りにしている。

2024年、中国の研究開発(R&D)費は97兆1,000億円(約4兆1,500億元)に達し、前年比13.1%増加した。米国の95兆3,000億円(約4兆800億元)を初めて上回り、世界首位となった。

日本は22兆1,000億円(約9,500億元)で世界3位。ドイツが18兆3,000億円、韓国が15兆3,000億円で、それぞれ4位、5位となった。

世界上位5カ国のうち、3カ国を東アジアが占めたことになる。第二次世界大戦後、米国はほぼ一貫して世界最大の研究開発投資国として首位を維持してきた。2024年、その約80年にわたる構図が初めて塗り替えられ、世界の科学技術をめぐる新たな勢力図が姿を現した。

世界の「一強」へ:中国はいかに首位に立ったのか

今回の報告書が重要なのは、中国が「首位に立った」という瞬間を記録しただけではない。そこに至るまでの過程も浮き彫りにしている点にある。

その前兆となったのが、科学論文における中国の台頭だ。中国は2017年、科学論文の総数で米国を上回った。2018年には被引用数が上位10%に入る高被引用論文の数で世界首位となり、2019年以降は上位1%のトップ論文でも首位を維持している。「量」から「質」へと研究成果の存在感を高めたことが、研究開発投資そのものの世界首位につながる土台となった。

そして、中国のR&D拡大を実際に牽引しているのは企業だ。2024年、中国企業の研究開発支出は75兆4,000億円(約3兆2,300億元)に達し、前年比13%増加した。企業部門のR&D支出でも米国を上回った。中でも「コンピューター、電子・光学製品製造業」の伸びが際立っている。

外部からの圧力も、国内の技術開発を加速させる要因となった。報告書は、米国が2022年に先端半導体や半導体製造装置に対する輸出規制を発表したことに言及している。その影響を受け、中国は自主研究開発を加速させ、世界最高水準の演算能力を持つスーパーコンピューターの自主開発にも取り組んできた。技術規制は中国の前進を止めることができず、むしろ自主イノベーションの歩みを加速させる結果となった。

「論文での首位」から「研究開発投資での首位」へ。中国は7年間で、科学技術を支えるシステム全体において大きな転換を実現した。

東アジアの多極化:日本と韓国、それぞれの「守り」と分化

中国が東アジアにおける新たな「一強」となりつつある一方、日本と韓国もそれぞれ異なる課題を抱えながら、世界有数の研究開発大国としての位置を維持している。

日本:投資総額は世界3位、研究の質は伸び悩み

日本の研究開発費は22兆1,000億円で、前年比8.4%増加し、世界3位を維持した。しかし、研究成果の質を見ると状況は異なる。被引用数上位10%に入る高被引用論文の数では、日本は世界13位にとどまり、前回調査から順位は変わらなかった。低迷が長期化している。日本の問題は「いくら研究開発に投じているか」ではなく、「その資金からどのような成果を生み出しているか」にある。世界3位という研究開発投資規模と、高被引用論文で13位という研究成果との間には、大きなギャップが存在している。

韓国:R&D集約度は世界最高水準、しかしリスクも浮上

韓国の研究開発費は15兆3,000億円で、世界5位となった。一方、GDPに占める研究開発費の割合、いわゆるR&D集約度では、韓国は長年にわたり世界最高水準にある。2022年には4.9%に達した。しかし、「投資の強度」がそのまま「研究成果の質」を意味するわけではない。韓国も、高被引用論文などの面では必ずしも投資規模に見合った成果を上げているとは言い難い。また、研究開発投資がサムスン電子やSKハイニックスなど一部の巨大企業に集中していることによるリスクも蓄積しつつある。東アジアにおける科学技術競争の構図は、すでに大きく変わった。

かつては、「日本が先行し、韓国が追い、中国が後を追う」という構図だった。

現在は、「中国が先頭を走り、日本が地位を守り、韓国では強みと弱みの分化が進む」という新たな構図へと変化しつつある。

米欧に強まる圧力:追う側の焦燥

東アジアで「一強多強」の構図が形成されつつある一方、米国と欧州の科学技術をめぐる状況も大きく変化している。

米国:総額では中国に抜かれるも、AIが新たな成長軸に

2024年の米国の研究開発費は95兆3,000億円で、前年比6.7%増加した。研究開発費の総額では中国に抜かれたものの、GDPに占めるR&D支出の割合は依然として高い水準にある。特に注目されるのは、米国における研究開発投資の新たな成長分野がAIに集中していることだ。基礎研究から応用開発まで、人工知能は米国の科学技術投資を牽引する中核分野の一つになりつつある。

欧州連合:低成長が続き、競争力への圧力強まる

一方、欧州の状況はより厳しい。経済協力開発機構(OECD)が2026年3月に公表した報告によると、2024年のEUの研究開発支出の伸び率はわずか0.4%だった。米国の3.4%、日本の5%超と比べても大きく見劣りする。EUの研究開発費がGDPに占める割合は約2.2%にとどまり、米国と日本の約3.4%を下回っている。EU27カ国の企業によるR&D投資の伸びも、米国や日本だけでなく、韓国やトルコにも後れを取った。EU自身も、研究開発支出が「世界の主要な競争相手を依然として下回っている」と認めており、投資拡大とイノベーション・エコシステムの強化を呼びかけている。EUは2030年までに研究開発投資をGDP比3%まで引き上げる目標を掲げているが、現在の伸び率のままでは達成は容易ではない。

その中で注目されるのが、欧州最大の技術大国であるドイツだ。ドイツの研究開発費は18兆3,000億円で世界4位。欧州製造業を支える中心的存在として、自動車、機械、化学など伝統的に強みを持つ分野で継続的に研究開発投資を増やしている。

しかし、それでも中国や米国との差は拡大しつつある。東アジアのR&D投資の伸びがEUの5倍を超える状況では、「欧州が取り残される」という議論は、もはや単なる警告ではない。現実に進行しつつある変化なのである。

世界の科学技術地図は、戦後最大級の再編へ

世界の科学技術をめぐる勢力図は、第二次世界大戦後でも最も深いレベルの再編期を迎えている。東アジアが台頭し、米国が圧力を受け、欧州が後れを取る。これは単なるランキングの入れ替わりではない。

世界の科学技術とイノベーションの重心そのものが構造的に移動し始めている。

研究開発資金がどこへ向かうのかは、常に将来の産業構造を先取りする重要なシグナルとなる。東アジアの研究開発費が米欧を合わせた規模を上回るようになる中、世界の科学技術の未来像もまた、再定義されようとしている。

研究開発投資で世界1位になったからといって、それがそのまま科学技術力世界1位を意味するわけではない。

しかし、一つの大きな転換点であることは間違いない。世界の科学技術競争をめぐるルールは、すでに大きく書き換えられ始めている。

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