AI・アジア・工場|午後10時、AI半導体の生産ラインはなおフル稼働

(李達・東京)

午後10時。マレーシア・ペナン州のバヤン・レパス工業団地では、一見すると目立たない工場が、煌々と明かりをともしている。

2階の窓越しに見えるのは、クリーンウエア姿で生産ラインを行き交う作業員と、照明の下で正確な動きを繰り返すロボットアームだ。遠くでは数台のトラックが荷下ろしをしている。至急、封止工程へ回されるウエハーが、また新たに運び込まれた。

同じ光景が、アジアの三つのタイムゾーンで同時に繰り広げられている。マレーシアの半導体封止・検査工場、韓国の半導体工場、成都のサーバー組み立てライン。数千キロ離れたこれらの現場を、昼夜を問わない操業へと駆り立てている力は、ただ一つ。AIだ。

2026年、アジアの主要半導体メーカーによる設備投資額は、合計で1,360億ドルを超え、前年比25%増となる見通しだ。資金が投じられ、生産ラインが動き、作業員は残業を続ける。これこそ、AIブームを「クラウド」の下で支える、最も現実的な物理的基盤である。

マレーシア・ペナン:半導体封止・検査工場の「3交代制」

ペナンにある半導体封止・検査工場のクリーンルームでは、作業員が3交代制で働き、設備は24時間稼働している。生産ラインでは、HBM(広帯域メモリー)の封止工程が一分一秒を争うように進む。チップ1個の納入が遅れるだけでも、AIデータセンターの稼働開始時期に影響しかねない。

マレーシアは世界の半導体サプライチェーンで約8分の1のシェアを占め、関連企業の多くがペナンに集まる。「東洋のシリコンバレー」と呼ばれるこの地域は、いま「東洋のシリコンバレー2.0」へと移行しつつある。世界のサプライチェーンを支える「受託製造の担い手」から、製品や回路を生み出す「設計者」への転換だ。ペナン州では現在、集積回路(IC)設計企業45社が事業を展開している。

需要はどれほど強いのか。マレーシア半導体産業協会によると、旺盛なAI需要を受け、一部のメモリー製品では生産能力がすでに埋まり、新規注文は2028年、さらには2029年まで積み上がっている。現地企業UWCの受注額は、2024年の1億5,000万リンギット未満から、2025年には1億8,000万リンギットへ急増した。2026年半ばには2億5,000万リンギットに達する見通しだ。同社は製造工程の一部を現地サプライヤーに委託し、周辺国にも事業を広げている。

グローバル企業も進出を加速させている。インテルは2025年12月、ペナンとクリムの封止・検査拠点を拡張するため、8億6,000万リンギット(約2億800万ドル)の追加投資を表明した。マレーシアを同社の世界的な封止・検査事業の中核拠点にする計画だ。2026年1月には、低消費電力AIソリューションを手がけるSyntiantが、ペナンで製造・研究開発拠点を稼働させた。面積は約22万平方フィートで、生産能力を年間約16億個へと倍増させ、800人分の高度技術職を創出する。2月には、台湾のディスプレードライバーIC封止・検査大手Chipbond Technology(頎邦科技)がペナンで新工場の開所式を行った。投資額は約2億ドル。6月にはシンガポールのGalatek Technologiesが、同社初の製造・組み立て・出荷拠点をペナンに設置し、今後5年間で現地投資を1億ドルまで拡大する計画を示した。中国の半導体封止・検査企業、甬矽電子も、21億人民元を上限にマレーシア拠点を建設する方針を発表している。

ペナンの夜は、クリーンルームの明かりに照らされ、眠ることがない。ここから出荷されるチップの一つ一つが、世界のどこかでAIサーバーの演算中枢に組み込まれていく。

韓国・器興:半導体工場の「軍拡競争」

韓国・京畿道にあるサムスン電子の器興(キフン)事業所では、新たなDRAM工場の建設が計画されている。その隣では、既存ラインの露光装置がナノメートル単位の精度で回路を形成する。1枚のウエハーには、AIチップの「頭脳」となる膨大な数の回路が刻み込まれている。

韓国経済新聞が2026年7月15日に業界関係者の話として報じたところによると、サムスン電子は器興事業所にDRAM工場を新設する計画だ。月産能力はウエハー約10万枚、投資額は数十兆ウォンに上り、早ければ2026年第3四半期にも着工する。当初、この用地には研究開発センターが計画されていた。だがサムスンは、AI向け計算基盤の拡大で増え続けるメモリー需要に対応するため、土地利用計画を変更し、大規模なDRAM生産ラインの建設へと舵を切った。

器興は、サムスンの巨大な生産網の一角にすぎない。同社は龍仁(ヨンイン)半導体クラスターに半導体工場6棟を建設し、次世代の先端プロセスとHBMの中核生産拠点とする計画だ。7月12日には、龍仁の第1工場の稼働開始を当初計画より1~2年前倒しし、2029年とする方針を発表した。サムスンは平沢(ピョンテク)と龍仁の2大クラスターに計2,030兆ウォンを投じる一方、光州(クァンジュ)にも半導体工場2棟を新設し、400兆ウォンを追加投資する計画だ。

サムスンのファウンドリー事業では、中長期の受注残が50兆ウォン近くに達している。

SKハイニックスも投資を積み増している。2026年7月、同社は忠清北道・清州(チョンジュ)で新たな生産能力を整備するため、100兆ウォンを投じる大規模な増産計画を明らかにした。韓国銀行は7月13日付の書面回答で、「半導体市場は現在も拡大が続いている。AIインフラ投資の急増によって半導体需要が伸び続ける一方、供給能力の拡大が需要の伸びに追い付いていないことが主因だ」と指摘した。

韓国の夜も、半導体工場のクリーンルームから明かりが消えることはない。50兆ウォン規模の受注残が、サムスンの生産ラインで処理されるのを待っている。そこから送り出されるウエハーの一枚一枚が、AIの計算能力をめぐる競争の行方を左右する。

成都:サーバー組み立てラインの「加速」

成都にあるAIサーバーの組み立て工場では、生産ライン上でロボットアームと作業員が連携して作業を進める。GPUサーバーが次々と組み上がり、梱包されてトラックに積まれ、その日のうちに中国各地のAIコンピューティングセンターへ向かう。

計算資源関連産業の急拡大とAIサーバー需要の増加を追い風に、成都市郫都区にある企業では、第1四半期の受注が大幅に増え、生産ラインが昼夜を問わず稼働している。成都は中国で初めて「計算資源利用券(算力券)」の仕組みを導入し、すでに2,000万人民元超を発行した。2026年以降は毎年1億人民元以上を発行し、計算資源の利用料を最大60%補助する。

華夏鯤鵬は2022年、ファーウェイの西部フルフィルメントセンター事業を落札した。現在までに、組み立て・最終検査ライン10本を整備し、ファーウェイのサーバー、ストレージ、スイッチなどを生産している。華鯤振宇は地元企業にサプライチェーンを開放し、ストレージ、IC、高速ケーブルなどの分野で10社余りと協力の意向を確認している。

成都の夜、サーバー組み立てラインの作業員たちは時間と競っている。サーバー1台の納入が遅れれば、それだけでAIモデルの学習期間が延びる可能性があるからだ。

【次回予告】
「コードを書かない。それでもAIに欠かせない人々」。次回は、AIハードウエアのサプライチェーンを支える主要な職種を取り上げる。ウエハー工程エンジニア、封止・検査技術者、サーバー組み立て作業員、設備保全エンジニアなどだ。

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