日本で自動車を修理する中国人が10年かけて築いた信頼

金子自動車社長インタビュー

東京近郊にある中古車販売店では、土日の2日間だけで7~10台の車が納車される。来店した顧客には、営業担当者が自動車保険の加入手続きから車庫証明の取得、登録手続きまで付き添う。納車前には点検・整備と徹底したクリーニングを行い、細かな隙間まできれいにする。納車当日にはセレモニーを開き、花束を贈る。納車後はバックオフィスの担当者が電話でフォローし、車の調子や、営業担当者から操作方法について十分な説明があったかを確認する。半年後、納車時と同じ水準でもう一度整備してもらうため、車を持ち込むリピーターもいる。

この店の名は金子自動車。中国出身の金子社長が、日本で10年にわたり経営してきた。

「毎週末に10台も売れる。なぜ顧客は正規ディーラーではなく、こちらを選ぶのでしょうか。御社の強みは何ですか」。記者が尋ねると、金子社長は淡々と答えた。「会社を始めて10年になります。評判もまずまずで、ほとんどのお客様が知人からの紹介です」。しかし、日本の中古車業界で「知人の紹介」が持つ意味は決して軽くない。

「一台売って終わり」から、「一台売るごとに顧客との関係を築く」へ

10年前、金子自動車が創業したばかりのころ、その商売のやり方は多くの在日中国系中古車販売業者と変わらなかった。オートオークションで車を仕入れ、整備して顧客に販売するというものだった。

「最初は状態の悪い車を仕入れ、それを直してお客様に販売していました」と金子社長は振り返る。だが、ほどなく問題に気づいた。年式の古い車を多く仕入れるほど、故障する割合も高くなる。「10台売れば、そのうち何台かに不具合が出ることもありました」

このやり方では事業を大きくできない。車を一台売るたびに、顧客からの信頼を一度ずつすり減らしかねないからだ。

そこで金子自動車は方針を転換した。現在扱う車は走行距離3万キロ未満が中心で、5万キロを超える車はほとんどない。「走行距離が数千キロから3万キロ未満の中古車なら、お客様も比較的安く買えて、故障も少なく抑えられます」

一見すると単純な転換だが、その背景には明確な採算の考え方がある。故障の少ない車は一台当たりの利益が多少薄くても、顧客満足度と紹介率が高くなり、長期的には経営が安定する。

お客様が不安に思うことは、すべてこちらで整えておく

日本で中古車を買うとき、消費者は何を不安に感じるのか。

第一は価格、第二は故障、第三は購入後もきちんと対応してもらえるかどうかだ。

金子自動車は、あらゆる工程を「見える化」することで、こうした不安に応えている。

在庫車が入庫すると、まず営業担当者が車両の状態を確認する。顧客から注文を受けた後は工場に入れ、法定点検を実施し、タイヤやブレーキ系統をはじめとする重要部品の状態を一項目ずつ記録する。

「例えば、タイヤの残り溝が4ミリだったとします。通常、1.6ミリ未満では法定基準を満たしません。私たちは状態をはっきり記録してお客様にお渡しします。売ったらそれで終わり、ということにはしません」と金子社長は話す。

記録は顧客の手元に渡る。交換が必要な項目と、まだ使える項目を三段階で明確に表示する。「私たちにも、お客様にも、状態がよく分かるようにしています」

車を販売しても、それで終わりではない。納車後1カ月以内は、すべての車を対象に無料の点検・メンテナンスを行う。問題が見つかれば、顧客はいつでも車を持ち込んで対応を受けられる。

「中古車は、売ったら終わりではありません。お客様が本当に不安に思うことは、できる限り納車前に解消しておくべきです」

中国人が日本で信用を築くには、いっそうの努力が要る

日本社会では、「信用」という言葉が持つ重みは中国以上に大きい。

中国人が日本で会社を経営し、とりわけ中古車販売のように高い信用が求められる業界に参入すれば、当初は二重の疑念にさらされる。中古車販売業者というだけで警戒されやすいうえ、外国人による経営には、さらに慎重な目が向けられるからだ。

金子社長は、この現実から目をそらさなかった。会社が今日まで続いてきた理由は一つだという。顧客に「売り切りの商売」だと思わせないことだ。

「お客様は皆、知人の紹介で来てくださいます。だますことも、売り切りの商売をすることもできません」

日本の商取引において、「知人の紹介」は何よりも強い信用の裏付けとなる。ある顧客が金子自動車を友人や同僚、近隣の人に紹介することは、自らの信用を懸けて同社を保証することにほかならない。

こうした信頼の積み重ねに近道はない。10年にわたり、すべての車を丁寧に整備し、一人ひとりの顧客に誠実に向き合い、納車後のフォローを一件ずつ確実に続けるしかない。

販売から修理へ、さらにカーライフ全体を支えるサービスへ

金子自動車は、もはや中古車販売だけを手がける会社ではない。

現在は自社の板金・塗装工場を構え、約12人のスタッフと8つの作業ベイを擁する。事故車修理、保険修理、板金、塗装、レッカー移動などに対応する。事業拡大に伴い、従来の整備スペースだけでは手狭になったため、その一部をカーフィルム施工店に転換した。ガラス用断熱フィルム、ボディ用透明保護フィルム、ボディカラー変更用ラッピングフィルムの3種類を提供している。

つまり金子自動車は、車両の仕入れと販売から、保険、点検・整備、修理、板金・塗装、カーケア、アフターサービスまでを一貫して担う体制を築いたことになる。

「車を一台売ることは、取引の終点ではありません」と金子社長は語る。この言葉こそ、金子自動車が日本市場で10年にわたり足場を固めてきた最大の理由なのかもしれない。

短評

信用こそ、中国系企業が海外で通用させる最も強い通貨

万戈

日本で外国人が経営する企業が地元顧客の信頼を得るには、日本企業以上の努力が求められる。これは同情を誘うための物語ではなく、現実のルールである。

金子自動車の歩みは、成熟市場における信用が、広告でつくり出せるものでも、価格競争で奪い取れるものでもないことを教えてくれる。車を一台ずつ売り、顧客一人ひとりと向き合うなかで、少しずつ積み上げていくものだ。

「知人の紹介」に価値があるのは、顧客が自らの信用を懸けて、その企業を推薦する行為だからだ。この推薦は、どのようなマーケティング施策よりも効果が大きく、同時に得難い。

中国系企業の海外進出をめぐっては、「どう市場に参入するか」「どう顧客を獲得するか」「どうコストを抑えるか」がしばしば議論される。しかし、金子自動車の10年は、さらに根本的な問いを投げかける。見ず知らずの人に、どうすれば自分たちを信じてもらえるのか。

その答えは、商売のテクニックにあるのではない。一台ごとの点検記録、納車後の一本一本の電話、そして納車セレモニーで手渡す一束の花に表れている。

信用こそ、中国系企業が海外で通用させる最も強い通貨である。築くには時間がかかる。だが、いったん築けば、簡単には揺るがない強固な競争優位となる。

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