良い文化商品は長く続くつながりを生む アジアの地域発ストーリー(二)

【元音=東京】

インドネシアにLAWEというブランドがある。創業者は全員女性だ。

当初の目的は素朴だった。インドネシアの伝統織物を広め、農村の女性織工に安定した収入をもたらすことだ。しかし、すぐに問題に直面した。伝統織物は主に衣服に使われるが、手織りの服は高価で、現在のインドネシアでは一部の富裕層にしか手が届かない。

そこで彼女たちは服をやめ、伝統織物をブックカバー、スマホケース、小銭入れに仕立てることにした。

小さな転換だが、発想は大きく変わった。服は一着買えば数年着られる。ブックカバーは一年で買い替える。前者は一度限りの消費であり、後者は次につながりになる。

消費者が次のLAWEのブックカバーを自然に買うようになれば、農村にいる女性の織り手との関係は、土産を一つ買って終わるものではない。手仕事を継続して支える関係になる。

共同創業者のAdinindyah氏は取材に対し、「私たちが売っているのは、実は物語です。女性の織り手は家事と仕事の合間に時間をつくり、製品を仕上げています。こうした物語は、まだ十分に語られていません」と話した。

一度限りのつながりが抱える限界

従来型の文化商品の商売は単純だ。観光客が訪れ、商品を一つ買って帰っていく。消費者と商品の関係は、代金を支払った時点でほぼ終わる。

この一度限りの関係には、おのずと限界がある。冷蔵庫に貼るマグネットも、チベット文字が彫られた土産物の鉛筆も、二つは必要ない。このような土産物は消耗品ではないため、そもそも再購入されにくい。

さらに深刻なのは、一度限りの関係からは一度分の価値しか生まれないことだ。客が一度支払い、企業が利益を得れば関係は途切れる。企業は客が誰で、何を好み、なぜ買い、他人に勧めるか否かを把握できない。販売のたびに顧客を一から獲得しなければならない。

定期購入で、一度の買い物を継続的な関係へ

ラサの「雪域尺素」は別の方法でこの問題に応えた。同社が提供するのは一冊の手帳ではなく、チベット文化と継続的に触れ合う定期購入の仕組みである。

消費者には毎月、手帳やシール、チベット紙のしおり、ARカードなどを収めたボックスが届く。カードを読み取ると、チベット文化を題材にしたアニメーションや無形文化遺産の継承者による音声解説が画面に現れる。テーマは毎月変わり、ある月はチベット紙の製法、別の月はチベットの伝統絵画「タンカ」の色彩を取り上げる。

事業紹介では、チベット文化市場における「体験の浅さ、利用場面の乏しさ、一度限りの接点」という課題の解決を中心に据えると説明している。

一冊の手帳を買う行為を、チベット文化との関係を育てる継続的な体験へ変えた。利用者が受け取るのは手帳だけではない。毎月一度、チベット文化への窓が開かれる。手帳を三カ月使えば、三回届くボックスが四半期にわたって利用者に寄り添う。毎月届くことが習慣になれば、チベット文化との関係は一度の購入から継続的な接触へ変わる。

スタンプラリーで街を一冊の手帳に

マレーシア・ペナンのKakpootは、別のつながり方を示している。

創作者の樊於媚氏は、ペナンで唯一、手帳アートを本業とし、自らはんこを彫る作家だ。最も誇りにしているのは手作りの木製ゴム印で、一つの商品を設計から完成まで仕上げるのに1~2カ月かかる。

ただし、目指しているのは、はんこの販売だけではない。ジョージタウン・フェスティバルでスタンプラリーを展開し、観光客が手帳を携えてペナン各地を象徴するスタンプを集め、すべて集めた人に記念品を渡す構想を持つ。

巧みなのは、スタンプを買う行為を街歩きへ変える点だ。消費者が買うのはスタンプだけではなく、ペナンを巡る道筋でもある。スタンプが接点となり、手帳が地図、街がコンテンツになる。観光客がスタンプを求めてジョージタウンの古い街路、ショップハウス、寺院、カフェを訪れれば、Kakpootは文化商品ブランドを超え、都市体験をつなぐ存在になる。

樊氏は、地元芸術家と行政が協力して独自の観光スタンプルートをつくり、ペナン旅行により深みと温かみを与えたいと話す。

商品からつながりへ 形になり始めた新しい道

LAWE、雪域尺素、Kakpootを並べると、地域発の文化商品の事業モデルが、商品を売る段階からつながりを売る段階へ移りつつあることが分かる。

商品を売る仕組みでは、つくり手が品物をつくり、客が買えば取引は終わる。つながりを売る仕組みでは、つくり手が関係を築き、客がそこへ加わった時点から取引が始まる。

LAWEが生むのはインドネシアの織り手とのつながり、雪域尺素が提供するのは毎月チベット文化に触れる関係、Kakpootがつくるのはペナンという都市とのつながりだ。消費者が購入しているのは、物そのものではなく、そこに生まれる関係である。

この変化は、地域発という言葉の意味も変えている。以前はチベット文字、インドネシアの織物、ペナンの建築といった地域固有の文化的記号が重視された。現在は、チベット文化を支える人々、織物をつくる女性、印章を通じて巡る街のルートという地域の関係網が重視される。

地域性は、もはや場所だけを意味しない。一つのネットワークである。文化商品の価値は、どこから来たかではなく、誰と誰をつないだかによって決まる。

短評 つながりが生む複利

帆布バッグは三年、手帳は三カ月、印章は数十年使える。しかし、つながりはさらに長く続きうる。

利用者がLAWEの二冊目のノートを買うころには、スマトラ島とカリマンタン島の織り手の違いを知っている。雪域尺素を三カ月購読すれば、チベット紙、タンカ、チベット香を支える三人の継承者を知る。ペナンで十個のスタンプを集めれば、ジョージタウンの十本の通りを歩いている。

一度限りのつながりが生むのは一度の収益だが、継続的なつながりは複利を生む。複利を決めるのは販売数量ではなく、どれだけの関係を残したかである。関係が増えるほど、複利も大きくなる。

地域発の文化商品が本当に数えるべきなのは、つくった商品の数ではなく、つないだ人の数なのかもしれない。

Related Articles

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

Back to top button